研究課題/領域番号 |
11J00114
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
内田 好海 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ストレス応答 / 概日リズム / PER2タンパク質 / 翻訳後修飾 / MKK7 / キナーゼ / CLOCK / 脳 |
研究概要 |
概日リズムは、様々な生命活動の周期を外界の日周期に適応させ維持する機構である。この機構は分子時計と呼ばれる転写-翻訳を介したネガティブフィードバックループにより細胞自律的に維持されている。分子時計においてCLOCK/BMALI二量体は時計標的遺伝子の転写を活性化する。標的遺伝子の1つであるPer2は翻訳後CLOCK/BMAL1の転写能を抑制する。この転写の活性化と抑制が約24時間周期で起こることで、時計標的遺伝子の発現に日周性を与えている。現在までに分子時計の主要な構成因子は同定されているが、分子時計の約24時間の周期性を維持する機構については不明な点が多く残っている。 MKK7はDNA損傷・UV照射等により活性化されるストレス応答性リン酸化酵素の1つであり、下流のJNKをリン酸化し活性化することで細胞死や細胞増殖等を制御する。私は培養細胞を用いた解析から、ストレス応答に主に働いていると考えられてきたMKK7が、非ストレス状況下において分子時計制御を担っていることを新規に見出した。またMKK7-JNKシグナル経路が、分子時計タンパク質PER2のユビキチン化を抑制し安定化さることを見出した。 培養細胞で見出したこれらの知見をin vivoにおいて検証するために、Synapsin-CreマウスとMkk7^<floxed>マウスを交配し、神経特異的にMKK7を欠損するマウスを作出した。現在これらのマウスの行動リズム解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りストレス応答性キナーゼMKK7のin vitroにおける分子時計制御機能を見出し、その成果を英文雑誌Journal of Biological Chemistryに報告した。一方、MKK7を神経特異的に欠損させるために、Synapsin-CreとMkk7^<floxed>マウスを交配したところ、MKK7のcKOマウスは致死を回避し、行動解析が可能な時期まで成長することが分かった。これらのマウスを用いたin vivo解析は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞特異的MKK7ノックアウトマウスの行動解析を行う。またMKK7をNestin-Creにより脳細胞全体で欠損させた個体は生まれた直後に致死となるのに対し,Synapsin-Creによりニューロン特異的に欠損させた個体は致死を回避することが分かった。これらのことから、MKK7がSynapsinの発現がまだ起こっていない脳の発生初期において特に重要な機能を持つ可能性や神経細胞以外のグリア細胞等において特に重要な機能を持つ可能性が示唆される。これらの可能性を検証するためにGLAST::CreERT2マウスをMkk7^<floxed>マウスと交配し、グリア細胞において時期特異的にMKK7を欠損させることを試みる。
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