研究課題/領域番号 |
11J00127
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小椋 陽介 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ホヤ / 中枢神経系 / 細胞周期 / 形態形成運動 / 細胞分化 / ライブイメージング / GFP-PCNA / cdc14 |
研究概要 |
本研究は、ホヤ幼生の中枢神経系構築過程における細胞周期進行を可視化することで、細胞周期進行を形態形成運動や細胞分化と協調させるための分子メカニズムを単一細胞レベルで明らかにすることを目的としている。 これまではFucciプローブを用いて細胞周期を可視化していたが、S期とG2期が明確に区別できないという欠点があった。そこで、DNA複製フォークを標識するプローブGFP-PCNA(GFPと増殖細胞核抗原の融合タンパク質)を用いてS期とG2期を区別することを試みた。GFP-PCNAは様々なモデル生物においてS期の進行を可視化するのに用いられている。ホヤのPCNA cDNAを用いて作製したGFP-PCNA mRNAをホヤ胚に導入したところ、S期の複製フォークに特徴的なGFP蛍光のドット状の凝集が核内でみとめられ、S期とG2期が区別できることが分かった。 発生過程における細胞周期進行は、単に細胞数を増やすためだけではなく細胞が分化するためにも重要な役割をもつ。ホヤの中枢神経系において、特に細胞分化が起こる尾芽胚期の細胞周期制御機構とその役割を明らかにすることを目的として、中枢神経系で胚性の発現を示す細胞周期制御因子Ci-cdc14に注目した。Ci-cdc14は出芽酵母cdc14フォスファターゼのオーソログ遺伝子である。出芽酵母においてはcdc14が細胞周期のS期、G2期、M期の進行において重要な役割をもつことが報告されているが、脊索動物の発生過程における機能はよく分かっていない。そこで、モルフォリノオリゴによってCi-cdc14の機能を阻害したところ、S期進行の指標となるEdUの取り込みが中枢神経系で顕著に減少した。この結果からCi-cdc14が中枢神経系のS期進行に重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、2、3年目に中枢神経系の細胞周期制御機構を解析する予定であったが、1年目の段階で既にCi-cdc14が中枢神経系の細胞周期制御に関与することを示唆する結果を得ており、計画よりも早く進展している。
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今後の研究の推進方策 |
Ci-cdc14の機能阻害実験から、この遺伝子が中枢神経系のS期進行の制御に重要であることが示唆された。今後はCi-cdc14が細胞周期制御や細胞分化の過程で果たす役割の解析を進める。また、Ci-cdc14の発現制御に関わる転写因子を特定し、中枢神経系構築過程におけるS期制御の仕組みを明らかにしたい。
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