研究課題/領域番号 |
11J00130
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
近藤 康久 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 考古学 / 地理情報システム / GIS / リモートセンシング / 写真測量 / 空間分析 / アラビア半島 / オマーン |
研究概要 |
1.研究の開始にあたり、これまでに収集した地理情報データを整理するとともに、研究対象地域のASTER衛星画像を入手した。また、考古学コンピューティングとアラビア考古学に関連する文献を購入し、研究の現状把握と方法論の検討につとめた。文献情報はFileMakerで自作した研究情報総合データベースに収録した。データベース設計のノウハウは、研究協力者として参加する「ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相」プロジェクトや東日本大震災で被災した文化財の復興支援プロジェクトにも活かされている。 2.空間分析の新展開として、予測モデリングの一種である生態学的ニッチモデリングの考古学への応用を試みた。西南関東縄文時代の猟場と貝塚の情報をサンプルデータとして、遺伝的アルゴリズムGARP法と最大エントロピーモデルMaxEnt法による予測結果を比較した。両モデルの結果が大きく異なったので、両者の積をとることによって共通の高確率領域を抽出する方法を提案した。この研究成果により、CSIS DAYS 2012の優秀発表賞を受賞した。 3.平成24年1月から2月にかけてオマーンに出張し、バート遺跡群において国土座標系に基づく測量網を設定するとともに、青銅器時代円形遺構の近接写真測量と、岩絵のオルソ画像および遺跡群の高精細パノラマ画像の作成に取り組んだ。近郊のアッダリーズ南遺跡でも写真測量調査をおこなった。また、遺跡を管轄する遺産文化省から、来年度以降、バート遺跡群の近隣地域における遺跡分布調査を実施することに内諾を得た。分布調査では青銅器時代の遺跡だけではなく、オアシス灌漑農耕の成立時期を示す新石器遺跡や、ホモ・サピエンスの南アジア以東への拡散時期を示す旧石器遺跡を発見する可能性があり、本研究課題が大きく発展する展望がひらけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の発生に伴い、被災文化遺産の復興支援に向けた地理情報システム(GIS)および遺跡データベースの整備という緊急の研究課題が生じた。しかしこれに伴う計画変更は最小限にとどめ、オマーンでの遺跡調査は当初計画通りに遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降、バート遺跡群の周辺地域において、遺跡の分布調査を実施することとなった。これを踏まえ、デジタル空間情報技術に基づく新しい遺跡分布調査の方法を開発・実践するよう、研究計画を軌道修正したい。具体的には、リモートセンシングと予測モデリングを組み合わせて調査対象地域における遺跡の密度を確率的に推定し、それをGPSとフィールドGISを用いた現地踏査で検証する。当初計画に盛り込んだ青銅器時代の遺跡に加え、それよりも古い新石器時代と旧石器時代の遺跡も研究対象に追加する。また、東日本大震災で被災した文化遺産の復興支援にも研究協力を継続する所存である。
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