研究課題/領域番号 |
11J00140
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石川 桂二郎 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 増殖糖尿病網膜症 / マイクロアレイ解析 / 網膜前増殖組織 |
研究概要 |
研究は、倫理委員会の承認後にインフォームドコンセントを得て行った。研究実施計画に従い、硝子体手術の際に採取した増殖糖尿病網膜症に伴う増殖組織6検体と、ヒト網膜(Clontech)3検体からtotal RNAを抽出した。各RNAからcRNAを作製し、Human-WG6マイクロアレイ(Illumina)にハイブリダイズした。洗浄、スキャン後、各遺伝子発現を数値化し、GeneSpring^<TM>を用いて正規化を行った後に、統計解析ソフトRにて算出したlocal false discovery rate(local FDR)値に基づいて、増殖組織で発現が有意に変動する遺伝子群を抽出し、データマイニングを行った。 本解析で、網膜に比べて増殖組織で、統計学的に有意に発現が変動した遺伝子群を、Gene ontologyデータベースを基に分類すると、細胞外マトリクス、炎症、ストレス反応に関連する遺伝子群に分類できた。また、血管新生の活動性が異なる増殖組織どうしの比較では、幼弱な新生血管を伴う増殖組織で、血管新生や細胞の分化に関連する遺伝子群の発現が上昇し、新生血管が退縮した増殖組織で、アポトーシス、線維化に関連する遺伝子群の発現上昇を認めた。Gene set enrichment解析を用いて、増殖組織に統計学的に有意に特徴的である分子経路として、TGFβシグナリング、Integrinシグナリング、Toll like receptorシグナリングが抽出された。抽出された10種類の遺伝子のmRNA発現レベルを、リアルタイムRT-PCR法を用いて検証したところ、すべての遺伝子の発現レベルの変化が、マイクロアレイ解析結果の傾向と合致していたことより、非常に信頼性の高い遺伝子群が抽出できていることを確認した。網膜と増殖組織間で有意に発現レベルに差のある遺伝子群の一部は、正常網膜に侵襲の少ない増殖組織治療の分子標的となりうること、また、増殖組織どうしの比較で抽出された遺伝子群は、増殖組織の特性を規定している可能性がある。 増殖組織特徴的遺伝子のうち、我々は、これまで関連の報告のなかったペリオスチン分子に第一に着目し、眼内でのmRNA、タンパク発現の局在について報告し、論文公表済みである。今後は、同分子の機能解析を行い、治療標的候補として研究を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の研究計画であるマイクロアレイ解析は終了し、平成24年度予定である、in vivo、in vitroを用いた機能解析の方法を確立し、開始に着手しているため。
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今後の研究の推進方策 |
現在着目しているペリオスチン分子について、中和抗体、もしくは核酸医薬によるin vitro、in vivo系を用いて治療効果検討を計画しており、すでに企業や研究所との共同研究の準備は完了したため、治療薬開発にむけて必要な研究を推進する。
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