研究課題/領域番号 |
11J00168
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金子 元 日本大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 一様分布論 / 代数的数 / 正規数 / 等比数列 / β展開 / ベキ級数 / 代数的独立性 / 加法数論 |
研究概要 |
2011度まで実数のb進展開に関する研究を行った。2012年度には特に代数的数のb進展開に関する論文を出版した。また、b進展開を応用した代数的独立性の判定法に関する論文も出版した。本年度は、さらに一般の実数について、線形独立性の判定法を構成した。この線形独立性の結果に関する論文を現在執筆中であり、投稿をする予定である。 さて、実数のb進展開を一般化した概念として、実数のβ展開という数系が知られている。この数系を研究することにより、代数的数による実数の近似の性質を明らかにすることができる。ところが、具体的な実数のβ展開に関して知られていることは少ない。例えば、有理数のβ展開ですら、その性質は一般には知られていない。より一般に代数的数のβ展開を研究することは、近似理論において重要である。 Pisot数やSalem数といった特殊な代数的数については、近似について著しい性質が知られている。本年度は、βがPisot数およびSalem数である場合に、β展開に関する解析をすることにより、Pisot数およびSalem数の近似の性質を研究した。研究遂行のために、フランスおよび韓国に渡航し、研究打ち合わせを行った。特に、フランスにおいて、組み合わせ論の手法を用いることにより代数的無理数のβ展開を研究した。この研究により、代数的数の近似の性質に関して、従来の手法では得ることができない結果を証明することができた。また、代数的数の近似理論の応用として、従来の方法では判定できない実数の超越性を証明することができた。β展開に関する研究を現在論文にまとめ、投稿をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
代数的数のβ展開に関する先行研究として、Bailey, Borwein, Crandall, Pomeranceによるものが知られている。ところが、彼らの手法はβが2以上の整数である場合のみ適用可能である。本年度は、フランスおよび韓国に渡航し、研究打ち合わせを行うことにより、βが一般のPisot数やSalem数である場合についても、代数的数のβ展開を解析できるようになり、従来の方法では得られない代数的数の近似の性質を証明できたためである。
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今後の研究の推進方策 |
実数の近似の性質を調べるためには、実数のβ展開を研究することが重要である。今後は、実数のβ展開について、組み合わせ論の手法を用いて、より精密に研究し、実数の代数的独立性に関する判定法を構成したい。また、等比数列の小数部分を研究することも、近似において重要である。実数の小数部分とは、実数を整数で近似した誤差であるためである。特に公比が代数的数である場合が、代数的数の近似の性質を解析するために重要である。今後は、組み合わせ論の手法を応用することにより、代数的数の近似の性質を明らかにしたい。また、p進数体や標数正の体についても、類似の理論を構成することにより、近似理論の発展に役立つと期待される。
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