研究課題/領域番号 |
11J00168
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金子 元 日本大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 有理近似 / 代数的数 / 小数部分 / 等比数列 / 一様分布論 / 正規数 / 加法数論 / 組み合わせ論 |
研究概要 |
本研究の目標は、代数的数の近似に関する性質を研究する事である。昨年度までの研究では、Pisot数やSalem数という特殊な代数的整数の近似に関する性質を、ベータ展開という数系を通じて調べた。 本年度の研究では、Pisot数やSalem数とは限らない代数的整数について、近似の性質を考察した。数の近似の性質を調べるために、等比数列の小数部分が用いられる。小数部分とは、数と近似整数の誤差であるため、これを調べる事は重要である。例えば、Pisot数の近似に関する性質が、Pisot数を公比にもつ等比数列の小数部分に反映される。 等比数列の小数部分が、一様分布するための条件を求めることは重要な未解決問題である。例えば、公比が2以上の整数bである場合を考える。この場合、等比数列の小数部分が一様分布するための必要十分条件は、初項がb進展開において正規数となることである。正規数であるための条件を求めることは、暗号理論などにも応用があるため、重要である。 本研究では、公比が必ずしも整数ではない等比数列の小数部分がいつ一様分布をするかについて考察した。これは、正規数に関する問題の一般化ともいえる。本年度は、組み合わせ論を用いた手法により、小数部分を解析し、一様分布性に関する部分的な結果を得ることができた。本研究で得られた結果を現在謙文にまとめ、投稿予定である。 また昨年度は、Pisot数やSalem数の近似に関して得られた性質を、超越数論へ応用した。ベキ級数にPisot数やSalem数を代入した値について、超越性の判定法を構成した。本年度は、研究を発展させることにより、これらの値について、代数的独立性の判定法を構成した。与えられた超越数の代数的独立性を示す事は重要である。代数的独立性に関する研究成果についても、現在論文にまとめ、投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目標は代数的数の近似に関する研究である。昨年度までは、Pisot数やSalem数という特殊な代数的整数について、ベータ展開という数系を通じて研究を行った。本年度は、等比数列の小数部分という観点から、必ずしもPisot数やSalem数とは限らない代数的整数についても、近似に関する研究を行うことができるようになった。その結果、Borel予想と呼ばれる重要な問題の一般化に対して、部分的な結果を得られたためである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、等比数列の小数部分など、数列の分布に関する研究を通じて、数の近似の性質を調べた。数学の研究において、1変数の理論を多変数に拡張する事により、結果が精密化されることがよくある。例えば、Thueの定理、Rothの定理は、Liouvilleの不等式における理論を多変数化したものであり、解析数論における非常に重要な結果である。今後は、数列の多変数化として、多重数列を考察する。特に、多重数列の小数部分を解析することにより、数の近似理論について、従来の結果を一般化及び精密化できると期待される。特に、超越数論に応用することにより、多変数関数の特殊値に関する代数的独立性の判定法に応用できると期待される。
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