研究課題/領域番号 |
11J00189
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小西 彬仁 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | グラフェンナノリボン / エッジ状態 / アンテン類 / ペリアセン / 縮合多環芳香族化合物 |
研究概要 |
本研究の第一の目的であるナノグラフェンのエッジ状態の起因について知見を得るべく、クォーターアンテンの合成・単離ならびにその物性評価を行った。 クォーターアンテンは4つのアントラセン環がペリ位方向へ縮環した分子であり、量子化学計算からは基底状態でほぼ開殻一重項を取ることが予測されている。合成はジフェニルメタンから全11段階で達成し、脱気封管中、メシチレン-1,2-ジクロロベンゼン溶液から再結晶することで良好な単結晶を得た。X線単結晶構造解析にて明確になったその分子構造は、これまでに合成してきたビスアンテン・ターアンテンと比較して、確かに基底状態における開殻性の増大を支持するものであった。また、クォーターアンテンは極めて酸素に対して不安定であり、空気中その溶液を放置すると半日程度で分解した。実際に酸素分子がそのBay領域に付加した分解物の単離にも成功し、開殻性の増大が分子自身の安定性の低下にも大きく寄与していることを明らかにした。 一般に開殻性の増大は急激なHOMO-LUMOギャップの低下を伴うが、酸化還元電位の解析の結果、クォーターアンテンのHOMO-LUMOギャップはターアンテンと比較して、若干の低下が見られるだけであった。一方、磁化率測定の結果から、S-Tギャップが他のアンテン類と比較して格段に減少していることが明らかとなった。これららの結果は同一の系においては、開殻性の増大にS-Tギャップの減少が支配的な寄与を与えることを示唆するものとして興味深い。 さらに、吸収スペクトルの解析から、第一励起状態が二電子励起状態であることを示唆する結果が得られた。開殻性の増大が基底状態だけでなく、励起状態にもどのように影響を与えるのか、共同研究者とともに理論・実験の面から検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クォーターアンテンは極めて不安定であるが、その合成・物性評価はほぼ達成しており、またその精製・単離方法も確立しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策として、以下の2点を検討している。 1、第一励起状態の電子構造の実験的解明。二光子吸収を測定し、第一励起状態が二電子励起状態出ることを決定する。 2、アンテン類の簡便合成の開発。アンテン類は小さなHOMO-LUMOギャップを有し、適切な置換基を導入すれば安定であり、分子素子として適した分子であるといえる。しかし、現在の合成法では大量合成に即さず、またその適応範囲も非常に狭いものである。アンテンの可能性開拓のため簡便合成法を開発する。
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