本研究は、「新奇な物性を示す五サイト秩序型ペロブスカイト酸化物の探索的研究」というテーマで遂行された。本研究の目的は、Aサイト秩序型ペロブスカイト酸化物AA'_3B_4O_<12>に焦点を当て、今までにない電気的、磁気的性質、電子状態を有する物質を合成し、それらの構造や物性を詳細に解明することである。 本年度の研究においては、A'サイトにMnを含むYMn_3Al_4O_<12>に焦点を当て、その基底状態における磁気特性について詳しく調べるため、粉末中性子回折測定を行った。高圧法を利用した複数回の合成の結果、ほぼ単相試料の作製に成功し、その中でも特に不純物の少ない試料を選別して、粉末中性子回折測定を行った。粉末中性子回折測定のRietveld解析の結果、YMn_3Al_4O_<12>は基底状態においてG型反強磁性構造をとることが新たに明らかになった。この研究結果は、2012年粉末冶金国際会議(Powder Metallurgy World Congress (PM2012)のプロシーディングスに掲載された。 さらに、当該研究室において、より高い圧力下での物質合成を可能にするため、新たに高圧発生装置を導入し、その立ち上げを行った。立ち上げにおいてはまず、荷重量に対する発生圧力の較正を行った。圧較正は、既に高圧下で構造相転移を起こし、それに伴って電気抵抗変化を起こすことが知られている金属について、高圧下での電気抵抗を測定することで行った。複数回の測定の結果、加圧に伴う各金属の電気抵抗変化を観測することに成功し、従って圧力較正を行うことに成功した。次に実際に高圧下で加熱を行い、試料の合成を試みた。最大13GPaまで加圧を行い、その圧力下での加熱を行った結果、粉末X線回折によって試料が単相で作製されたことを確認し、新装置を利用して高圧下での試料作製が行えることを実証した。 また、前年度において合成、磁気特性の解明を行った新物質La_<1-x>Na_xMn_3Ti_4O_<12>の研究成果については、本年度内に学術論文としてまとめられ、国際学術誌であるChemistry of Materials誌に掲載された。
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