研究課題/領域番号 |
11J00250
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 周太 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | パルサー星雲 / パルサー風 / 相対論的磁気プラズマ |
研究概要 |
私の研究対象は、我々の銀河系内で観測されるパルサー星雲という天体である。パルサー星雲はその中心に存在するパルサーという強磁場を持ち高速で回転している中性子星によって形成される。パルサーと比較して豊富に観測データが存在するパルサー星雲は、多くの問題が残されたパルサーの磁気圏やパルサーから吹くパルサー風の問題に深く迫ることを可能にする。我々は特に、パルサー星雲の観測スペクトルや、観測スペクトルの空間分布を超相対論的粒子からの放射機構と力学的性質を通して理解することを目的としている。 我々がこれまでに構築したパルサー星雲のスペクトル進化のモデルを、近年飛躍的に発展した高エネルギーガンマ線観測のデータを用いて研究した。本年度は、スペクトル進化モデルを高エネルギーガンマ線で同定された天体に適用した結果をまとめ論文にした。高エネルギーガンマ線で同定されたパルサー星雲は、個々に年齢やエネルギー源となるパルサーの性質の違いを反映するが、パルサーから供給されるエネルギーの磁化率(電磁とプラズマのエネルギー比)は同様であることがわかった。これはパルサー風の物理を理解する上で非常に興味深い結果で、相対論的磁気プラズマ中でも太陽表面など起こる磁気リコネクションなどの物理過程で、電磁場からプラズマへ非常に効率のよくエネルギーが変換されていることを要請する。 また、我々はパルサー星雲のスペクトル進化モデルを高エネルギーガンマ線観測で同定されていないパルサー星雲にも適用した。そのようなパルサー星雲は高エネルギーガンマ線で同定されたものと同様の供給エネルギーの磁化率などを有し、中心パルサーの初期回転エネルギーの総量やパルサー星雲の銀河系内における位置などが、高エネルギーガンマ線で同定されるかを決めるという結果を得た。これは、内部で起こる物理過程がパルサー星雲毎に大きく違わない可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はこれまでの研究をまとめた論文の作成に比較的時間を割いたため。特に、この研究の考察から得られた新たな問題に少々時間を割いた。この問題は「研究の目的」にある研究と関連して新たに取り組むべき課題として認識している。やや遅れている「研究の目的」にある研究については、すでに結果を得ており現在論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の大きな変更はなく、「パルサー星雲の空間構造」に関する研究を行う計画である。計画している研究は、本年度までに行った「パルサー星雲のスペクトル進化」に関する研究をもとに、より拡張したモデルを用いるものである。そのため、これまでに得た結果を吟味することも重要である。 また、これまでに行った研究について、従来考えられていたものと相反する結果が得られて部分がある。これに関しても別の視点から研究を行う計画であるが、当初の研究計画にできるだけ支障がでないように研究を進める予定である。
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