研究課題/領域番号 |
11J00271
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 安大 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 太陽系外惑星 / 惑星軌道移動理論 / 直接撮像法 / 惑星形成理論 |
研究概要 |
本研究のテーマは、これまで発見されてきている太陽系外惑星系のうち軌道離心率が異常に高いものや軌道傾斜角が中心星の自転軸とずれているものの由来を探ることにある。原因としてとりわけ注目されているのは古在効果(中心星が連星系をなしている場合、伴星からの重力的影響により中心星まわりの惑星の軌道が乱されること)および惑星散乱(複数惑星系において惑星同士の重力的影響により互いに軌道を乱し合うこと)であるが、観測的困難からそのどちらが支配的であるか等の観測データに基づいた統計的議論はなされていないのが実情である。そのため、本研究では主に直接撮像法を用いて中心星周りの伴星探しを行い、それに基づいて古在効果の有無を決定することで古在効果および惑星散乱の起源を統計的に知ることを目的としている。 本年度は12個以上の系ですばる望遠鏡を用いた直接撮像を行い、これまでとあわせて既に28個の系について観測が行われた。これによりサンプル数は約2倍に増加し、またすばる望遠鏡から観測できる天体のうち基準を超えるものをほぼ網羅的に観測できた。結果として、高軌道離心率のもので4つ、軌道が傾いているもので12個の系で伴星候補天体を発見した。伴星確定のための追観測はまだ終了していないものの、この観測により統計的議論が可能となった。 とりわけ逆行惑星系HAT-P-7については2010年に伴星候補天体が2つ存在することを発見していたが、本年度の観測で追観測に成功し、2つのうち1つが伴星であると確定したことで連続的古在効果によって惑星の軌道が傾いた可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に問題なく進展している。本年度は私の観測方法がHATP-7という個別の系について成功したことで、直接撮像法から惑星軌道移動理論への示唆を与えられることを確認できた。また、さらにサンプル数を増やすことが出来たため、最終目標である統計的議論についても見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までで予定していたサンプル数のほとんどを観測できたため、来年度以降は追観測により伴星候補天体の確定が最重要案件となる。この確定をもって統計的議論の礎となる。伴星候補の確定には共通固有運動を用いるが、一般に固有運動は地球から離れた天体ほど大きさが小さぐなるため、観測がしづらくなる。私のサンプルにも数百pc程度の遠方天体が含まれており、それらの天体については来年度までに固有運動による確定が難しい。そこで、多色による観測が望まれる。通常の観測では検出の効率のために一波長での撮像を行うが、これでは候補天体の有効温度を測定できないが、多色による観測では各波長での等級の差を用いて有効温度を推定できる。この温度とみかけの等級から距離を推定することによって中心星と等距離にあるかの推測が可能である。
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