研究概要 |
最近の研究から,卵母細胞の核小体は成熟には必要ないが,受精後に形成される前核中の核小体形成とその後の胚発生に必要なことが示された。2細胞期胚の核小体は卵核胞期(GV期)の核小体と同様に緊密な形態をしている。この核小体にはrRNA合成能はないが,その機能に関しては,胚発生を支持するとの手がかり以外は何もわかってない。本研究では,ブタ卵母細胞および胚を用い,マイクロマニピュレーションによって卵核胞期(GV期)の卵母細胞と2細胞期胚の核小体を置換したのち培養し,発生に及ぼす影響を調べた。まず,2細胞期胚の核小体が,GV期の卵母細胞の核小体を代替しうるかを調べた。活性化2日後の卵割率は全での実験区で高い値を示した(86~98%)が,7日後,脱核小体卵母細胞は,ほとんど胚盤胞へ発生しなかった(2%)のに対し,脱核小体一成熟培養したMII卵母細胞に,GV期卵母細胞もしくは2細胞期胚の核小体を顕微注入すると,胚盤胞へと発生した(47%,50%)。次に,GV期に脱核小体することによって作出した核小体のない2細胞期胚に,GV期もしくは2細胞期胚の核小体を顕微注入することによって,発生能を回復させることができるかを調べた。GV期卵母細胞もしくは2細胞期胚の核小体を注入した2細胞期胚は,ほとんど胚盤胞へ発生しなかった(3~6%)。以上の結果から,2細胞期の核1」、体にはGV期の核小体と同様に発生を支持する機能があること,また,核小体は1細胞期と2細胞期の間の胚に必須であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
核小体の詳細な動態とタンパク質レベルの解析を行うために,蛍光蛋白質を標識した核小体蛋白質のmRNAを合成し,卵母細胞に注入することによってライブセルイメージングを行なう。また,発生過程における核小体の機能は未だ解明されていないことから,受精卵および初期胚の核小体の動態,体積および個数の変化などに注目し,発生過程における機能の解明を目指す。
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