研究課題/領域番号 |
11J00321
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長 勇一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | カリウム・アルゴン法 / その場年代計測 / 惑星探査 / LIBS-QMS法 |
研究概要 |
平成24年度には、昨年度に製作したカリウム・アルゴン計測装置を用いて、(1)カリウム検量線の作成、(2)鉱物試料の年代計測、(3)模擬的なアイソクロン計測、を実行した。 (1)カリウム検量線 平成23年度に作成したカリウム濃度標準試料をもとに、カリウム濃度の検量線を作成した。スペクトル解析法として内標準法を用いた。これは、カリウム輝線(769mm)の近く(777mm)に存在する酸素輝線の強度を計測し、それによってカリウム輝線の強度を規格化する手法で、実験条件(レーザーエネルギー、試料の表面状態など)の微妙な変化に対して堅牢であるという特徴をもつ。この結果、従来よりも高精度のカリウム検量線を得ることができた。カリウムの検出限界は300ppmであり、定量限界は1wt%であった。 (2)鉱物試料の年代計測 既知の年代を持つ鉱物試料三種(角閃石、雲母、斜長石)と隕石試料(Eucrite)一種を構築した年代計測システムで測定した。その結果、角閃石(K2O=1.12wt%、17.5億年)は21±3億年、斜長石(K2O=1.42wt%、17.7億年)は20±3億年、雲母(K2O=8.44wt%、17.5億年)は18±2億年、という年代値が得られた。私の開発しているLIBS-QMS法によって年代値が算出可能であるということを初めて示した結果である。一方、隕石試料はカリウムの含有量が少なく、正しい年代値は得られなかった。しかし、隕石試料から抽出したアルゴンの量と同位体比は概ね正しかった。 (3)模擬的アイソクロン計測 上記三つの鉱物試料の計測結果を「一つの岩石の異なる部分を計測した」と模擬して、アイソクロンを描いてみた。その結果、既知の年代である17.9億年に対して17.8億年という値を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に製作した年代計測システムを使って、実際に鉱物試料の年代値を算出することができたため。また、模擬的なアイソクロンの作成によって、試料さえ整えばアイソクロン計測が可能であることが示唆された。現在、地球科学の研究者にコンタクトを取っており、岩石試料を提供していただける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はこれらの年代初期分析結果に立脚し、(1)カリウム・アルゴン計測の精度向上と検出限界の引き下げ、(2)天然試料を用いたアイソクロン年代計測の実証、および(3)装置の小型化を進める。 (1)は分光計測の効率化を図ることと、プラズマの分光視野を最適化すること、およびスペクトル解析を精密化することで行う。(2)は岩石試料を譲り受けて計測する。(3)は大学内外の工学開発経験者と連携し、本手法に特化した装置の開発を進めることで行う。
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