研究概要 |
1.二体衝突近似シミュレーションコードの改良 (ア)連続照射のための改良 照射損傷に伴う材料の構造変化を計算するため,原子を一発打ち込んだ後,原子位置を記録し,構造が変化した後の標的材料に次発を打ちこむよう改良した. (イ)原子熱振動効果の組込み 有限温度下での照射シミュレーションを可能にするため,二体衝突計算の際,標的原子の位置を格子点から熱振動分布に従って変位させるようコードを改良した. 2.ハイブリッドシミュレーションコードの改良 (ア)連続照射のための改良 連続照射計算のためハイブリッドコードを改良した.分子動力学計算の結果をプロセス間通信により二体衝突近似プロセスへとフィードバックするよう改良した. (イ)分子動力学計算領域の並列化 ハイブリッドコードでは複数の分子動力学計算領域が生じる.独立した分子動力学計算領域を複数のCPUを用いて並列に解くことで計算時間を短縮した。 3.水素プラズマ照射に伴う単結晶グラファイトの照射損傷の解明 上記のとおり改良したシミュレーションコードを用いて,水素原子をグラファイトに照射するシミュレーションを行った. (ア)有限温度下におけるチャネリング効果の解明 照射原子飛程の材料温度依存性を調べた.本研究は,『International Conference on Simulation Technology』のプロシーディングに採録された. (イ)プラズマ照射に伴う材料の照射損傷の解明 グラファイトに水素原子を連続して打ち込むシミュレーションを行い,結晶構造の破壊過程を調べた.sp2結合が壊れ,sp結合が増加する様子の時間発展を解明した.また,アモルファス化によりチャネリングパスが無くなり,照射原子飛程が短くなることを示した.本研究は,論文誌『Japanese Journal of Applied Physics』に採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画に従って,二体衝突近似シミュレーションコードの改良および,二体衝突近似・分子動力学ハイブリッドシミュレーションコードの改良を行い,研究成果を挙げた.二体衝突近似シミュレーションコードの改良では,(1)「連続照射のための改良」と(2)「原子熱振動効果の組込み」を行った.ハイブリッドシミュレーションコードの改良では,(1)「分子動力学計算領域の並列化による高速化」と(2)「連続照射のための改良」を行いました.そして,改良したコードを用いて(1)「有限温度下におけるチャネリング効果の解明」と(2)「プラズマ照射に伴う材料の照射損傷の解明」に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
1.多結晶グラファイトへの水素照射シミュレーション 実際のダイバータ板は多結晶である.そこで,多結晶グラファイトを標的材料とついて準備し,そこに水素原子を打ち込むシミュレーションを行い,水素リテンション量などを見積もる. 2.タングステンへの希ガス照射シミュレーション 近年,ダイバータ材としてタングステン材料が注目されている.タングステン材料にヘリウムプラズマを照射するとfuzzと呼ばれるナノ構造が形成されることが知られている.しかし,その形成過程はあきらかになっていない.そこで.タングステン材料に希ガスを照射するシミュレーションを行い,その形成過程について考察する.
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