研究概要 |
(1)エンド選択的環化を伴うアリール化反応を用いた生理活性物質hNK-1受容体阻害剤の形式全合成 パラジウム触媒による不飽和アルコールの分子内環化反応は、温和な条件で複雑な環状骨格を一挙に構築することができる有用な反応である。しかしながら、通常反応は速度論的に有利な5-exo型で進行し、得られる環化体は五員環に限られていた。昨年度の研究で我々は、パラジウム触媒の配位子を適切に選択することで速度論的に不利な6-endo型環化を初めて達成した。この反応により、高度に官能基化された六員環化合物を短工程で合成可能となった。 今年度、我々はこの新規環化反応を利用し、生理活性物質hNK-1受容体阻害剤の形式全合成を行った。具体的にはまず既知の不飽和アルデヒドに対し、シリルアセチレンを不斉1,4-付加させることで光学活性なアルキノールを得た。次にアルキン末端のシリル基を脱保護し、ヒドロキシ基の保護およびアルキン末端のアミド化を経てイナミドを合成した。この化合物を脱保護することで、ω-ヒドロキシアルコールを高収率で得た。この合成したω-ヒドロキシアルコールを開発したエンド選択的環化アリール化の条件で反応させることで、ケテンN, O-アセタールを選択的に合成した。最後に酸性条件下、加水分解を行うことでhNK-1受容体阻害剤の合成中間体へと誘導することに成功した。
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