研究課題/領域番号 |
11J00348
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
浅田 晴久 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | インド / アッサム州 / ブラマプトラ川 / 氾濫原 / 洪水 / 稲作 / 民族 |
研究概要 |
2年目の2012年度は、前年度までに得られた成果をまとめ、図書および論文として発表した。『モンスーンアジアのフードと風土』では南アジアでみられる気候変動と稲作への影響の地域差(第3章)、ならびにインド北東地方で生産・消費されているモチ米の利用法(第5章)について報告した。『Climate and Rice Cropping Systems in the Brahmaputra Basin』では気候と稲作の関係についてさまざまな空間スケールで調べる意義を強調した。 5月から6月にかけてインド・アッサム州に滞在して現地調査を行った。前年度はアッサム州内の村落を広域的に見て回ったが、今回は州東部のロキンプル県に対象を絞り、県内の村落を複数箇所訪問して、生業活動に現れるローカルな生態環境への適応法について調査を行った。 7月に帰国した後は、調査成果の分析とまとめ作業を行った。その結果、アッサム州のブラマプトラ川渓谷では民族毎に異なる生態環境に応じたゆるやかな棲み分けが見られ、生業活動の差異を利用した民族間の交流が見られることが明らかになった。本成果は9月にブータンで行われた国際研究集会と10月に開催された日本地理学会2012年度秋季学術大会で発表された。またドイツ・ケルンで開催された第23回国際地理学会にも参加し、アッサム州で行ってきた村落調査の成果を発表した。 11月から12月にかけて再びインド・アッサム州で現地調査を行った。今回はブラマプトラ川の支流であるスバンシリ川の中州に暮らすミシン族に対象を絞り、村落に通って調査を行った。村落の基本情報を集めるとともに、来年度に実施予定の本調査のための準備を行った。 国内では東京大学生産技術研究所の竹内渉准教授と協力して、高解像度の地表水冠水率のデータを用いてブラマプトラ流域の稲作水文環境を解析した。下流域のバングラデシュと中流域のアッサム州では乾季のボロ稲の栽培規模に大きな隔たりが見られるが、これにはマクロレベルの地形や土壌が要因として効いている可能性が徐々に明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に予備調査として訪問した複数の村落の中で、詳細な調査に適したいくつかの村落は再度訪問して既に聞き取り調査などを行っている。一方で集中的に調査を行う予定であるミシン族の村落に関して、村人への説明、協力者への依頼などに時間がかかってしまい、本調査への移行が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで村落滞在調査を円滑に行うために時間をかけて準備してきたが、就職が決まったために特別研究員を4月15日付で中途辞退することになった。本年度は長期間の調査が困難になることが予想されため、研究体制を見直して、現地の大学の協力の元、若手研究員や大学院生をアシスタントに雇い、村落調査を補助してもらうことも検討している。比較的短時間で調査できる項目に焦点を絞る必要もある。
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