研究概要 |
23年度は、線形のペイオフを持つ2人のプレイヤーによる公共財供給について、理論でも実験でもパレート効率的な配分を達成する制度の設計に取り組んだ。理論的には、Saijo,Okano and Yamakawa(2012)の議論を拡張することで、ミニマム・メイト・チョイス・メカニズムを導入した。従来のメカニズム・デザイン研究では、人々の行動を予測するのにナッシュ均衡やそれを精緻化したものが重視されてきたのに対し、本研究ではSaijo,Okano and Yamakawa(2012)の実験で観測された弱支配される戦略の後ろ向き消去という行動原理を採用している。また、アプルーバル・メカニズムと呼ばれる2段階メカニズムのクラスのうち、唯一ミニマム・メイト・チョイス・メカニズムが単調性と自発性という自然な仮定を満たしつつ均衡でパレート効率的な配分を達成できることも示した。実験においては、被験者の行動がわずか数回の繰り返しののち、弱支配される戦略の後ろ向き消去と整合的となったことから、ミニマム・メイト・チョイス・メカニズムの性能の良さが示された。のみならず、多くの被験者はむしろ別の単純なアルゴリズムでゲームを解いていることも分かりつつある。以上の実験結果を岡野芳隆氏、西條辰義氏との共著論文にまとめ、日本経済学会(筑波大学)をはじめとする国内外での学会・セミナーで報告し、参加者から多くの有益なコメントを頂いた。この論文を完成次第、国際的な学術誌に投稿する予定である。
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