研究概要 |
本年度は,筋電義手制御のためのトレーニングシステムおよび筋電義手をはじめとする様々な機器の制御法について検討を行った.まず,コンピュータ上に仮想的な義手(Virtual Hand:VH)を作成し,これを用いたトレーニングシステムを開発した[日本ロボット学会誌,第20回計測自動制御学会中国支部学術講演会].このシステムでは,操作者の筋電位によりVHを制御し,仮想空間上の物体の把持や移動等の仮想的な作業を行うことができる.本研究では,まず義手の操作能力評価に広く用いられているBox and Block Testを仮想空間上に再現し,物体を把持・移動するなどの仮想環境独自の訓練を実装した.そして,提案システムを用いて切断者を含む6名の被験者を対象として5日間の訓練実験を実施した結果,作業能力が有意に向上することを確認した. 次に,提案システムを応用して世界で最も普及しているOtto Bock社製の筋電義手:MYOBOCK用のトレーニングシステムを新たに開発した.このシステムではVHにMYOBOCKの動作特性を導入しており,臨床で行われている作業訓練を模擬することができる.実験では,開発したVHを用いて物体の把持・解放作業を行い,実際の作業訓練を代替できる可能性を示した[日本人間工学会中国・四国支部九州・沖縄支部合同開催支部大会]. 一方,俊敏な動きと力強い把持が可能な5指駆動型義手を試作し,筋電位による制御を実現した[第21回インテリジェント・システム・シンポジウム(FAN2011)].さらに,左右各腕の動作を個別に推定して組み合わせることが可能なニューラルネットを提案し,ロボットマニピュレータ制御に応用した[SII2011]. 以上のように,筋電義手の作業訓練支援および義手型ロボットの随意的な制御を実現することができた
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今後の研究の推進方策 |
今後は,提案したシステムの臨床応用可能性を検討するために,被験者を増加して長期間の訓練実験を行う.このとき,実験協力予定者である上肢切断者や作業療法士の意見に基づき,システムのブラッシュアップを図るとともに適切な訓練回数・期間を検討する.また,仮想環境内の情報を立体視や振動子によって被験者にフィードバックすることで,より実環境に近いシステムを構築する.さらに,これまでに提案した電極・動作選定法とトレーニングシステムを融合し,システムが被験者の状態を学習することで,被験者に合わせた訓練が可能な訓練システムを実現する.
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