研究課題/領域番号 |
11J00542
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平 直江 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 腫瘍マーカー |
研究概要 |
腫瘍マーカーは癌の早期診断や進行度判定・予後判定・薬剤感受性予測などの診断に大きく貢献していることが広く知られていることから、新規腫瘍マーカーの同定は、これらの術前・術後診断の正確性の向上につながると期待されている。 これまでに私はTissue Arrayを用いた免疫組織学的解析により、DYRK2はいくつかの癌組織において発現の低下が見られることを明らかにしている。このことから、DYRK2は癌診断におけるバイオマーカーとして機能するのではないかと期待される。そこで本研究では、DYRK2の発現の低下が観察された癌組織のうち、乳癌に注目し、DYRK2の腫瘍マーカーとしての有効性を評価することを目的として研究を進めた。 正常乳腺組織と乳癌の臨床検体を用いて免疫組織染色を行った結果、浸潤性乳管癌におけるDYRK2の発現は、正常組織に比べて有意に低下していることを明らかにした。また、私はこれまでにDYRK2ががん遺伝子産物c-Jun・c-Mycへのリン酸化を介して分解を引き起こす事を明らかにしている。そこで、c-Jun・c-Mycのリン酸化状態とDYRK2の発現について病理解析を行ったところ、DYRK2の発現の低下がみられた検体で、c-Jun・c-Mycのリン酸化状態が低くなっていることを明らかにした。そして、これらの癌検体ではc-Jun・c-Mycの発現の上昇がみとめられた。このことから、乳腺組織でのDYRK2の発現の低下は乳癌の進展を引き起こすマーカーとなりえると期待される。以上の研究成果はThe Journal of Clinical Investigationに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は浸潤性乳管癌を用いた解析によりDYRK2が乳癌の進展に関与していることを明らかにした。そして本解析結果が科学雑誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は乳癌の進行度や予後などの観点からDYRK2のマーカーとしての有用性について検討する計画である。また、DYRK2の発現の低下についての分子機構は明らかとなっていない。そこで、DYRK2の発現を制御する分子を網羅的に探索し、その制御分子の発現とDYRK2の発現の相関について解析を進める計画である。また、DYRK2以外の腫瘍マーカーの探索を進める為に臨床検体を収集し、質量分析器による解析を進めたいと考えている。
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