研究課題/領域番号 |
11J00552
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
千賀 亮典 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ナノデバイス / カーボンナノチューブ / フラーレン / 透過電子顕微鏡 / 透過電子顕微鏡内マニピュレーション / 分子動力学シミュレーション / ナノ加工 |
研究概要 |
ナノカーボン材料を利用した新規デバイスとしてナノサイズ高周波振動子の開発を進めてきた。当該年度は透過電子顕微鏡(TEM)内におけるカーボンナノチューブ(CNT)の加工技術など、目的とする高周波振動子を作製する上で欠かせない要素技術の構築を目指し、TEMマニピュレーションを利用した実験を柱に精力的に研究に取り組んだ。具体的には、直径差の異なるCNTが連続したダンベル形状CNTの製作技術、その中へフラーレン分子を導入するための電子線誘起によるフラーレンマニピュレーション技術、種々のフラーレン分子の形状の違いを利用したCNTカプセルの幾何構造制御技術を開発した。今後、これらの技術をベースにCNTカプセル振動子が作製され、目的とする高周波振動子のデバイス物理が実験的に明らかになるものと期待できる。また、CNTの加工技術を研究している過程で、ある一定の大きさ以上の内径をもつCNTが室温で扁平状態に遷移すること、またそれが通電加熱によって円筒状態を回復することを見いだした。さらに、この現象を利用した回転式アクチュエータを提案し、理論的にその捻れ角が制御できること、応答速度が極めて速いことなど、新しいデバイス実現の可能性を示唆した。この成果は、Applied Physics Lettersに掲載されると共に、editorに選ばれてVirtual Journal of Nanoscale Science & Technologyにも掲載され、高い評価を受けている。以上の成果はいまだ実用化段階には至っていないCNT-本レベルの応用を目指す上で必要不可欠な要素技術であり、当該分野の発展に貢献する重要な成果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カーボンナノチューブを用いた高周波振動子の作製技術として、ダンベル型CNTの作製技術、フラーレン分子の内包技術、内包フラーレンから作製するCNTカプセルの構造制御という3つの重要な要素技術について進展が見られた。これらは当初の計画通りであり、あとはこれらの要素技術を組み合わせることで高周波振動子を作製し、ナノスケールの高速リニア振動子という新たな物理現象の実証への展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実証してきた、要素技術をより確かなものとするため、データ数を増やしそれぞれの技術の核となる物理現象の詳細理解を目指すとともに、各々の技術を組み合わせ、高周波振動子を作製する。当初の予定では透過電子顕微鏡(TEM)内ラマン測定による温度計測から物理現象の詳細解明に着手する予定でいたが、TEM内でCNT-分子からラマン測定を行うための環境整備にかかる予算を考慮し、この部分は分子動力学シミュレーションを利用した計算で補っていく。また高周波振動子の作製に成功した後はCNTカプセルの熱励起によるリニア振動をインピーダンス測定により振動数を計測する。さらに相間で生じるエネルギー損失を踏まえたCNTカプセルのリニア振動に関する物理について議論する。
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