昨年度に発見した、銀河系中心から南側に伸びる巨大で異常な電離状態を持つプラズマの解析結果を投稿論文としてまとめ、The Astrophysical Journal誌に受理された。そしてこの結果をもとに、プラズマパラメータの空間分布を詳細に求めることに成功した。これにより、数10万年前に銀河系中心の超新星率が高く、そこでできた大量プラズマが南方向に噴き出したのではないかとの説を提唱した。加えて、過去のあすか衛星のアーカイブデータと合わせることで、南側だけでなく北側にもプラズマ放射が存在し、双極状になっていることを世界で初めて発見した。この結果を2度の国際学会で発表するとともに、博士論文として完成させた。本研究で明らかになったプラズマの吹き出しは、現在静穏な銀河系中心領域が過去には活動的であったことを示すだけでなく、生成された重元素の循環が天の川銀河ではどのように起こっているか、その先鞭となる点で意義がある。また、天の川銀河中心の研究をさらに押しすすめるために、次世代のX線検出器SOIPIXの開発も併せて行った。昨年度の結果にヒントを得て、電化収集効率の場所依存性をさらに詳しく調べ、ピクセルの境界でとくに電化収集効率が落ちてしまうことを明らかにした。一方、信号処理回路にチャージセンシティブアンプを導入した新型素子もプロセスし、これまでで最高のエネルギー分解能を達成することにも成功し、実用化に向けて着実に進みつつある。
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