研究課題/領域番号 |
11J00606
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤野 達哉 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 宇宙物理 / ガンマ線 / ガス検出器 |
研究概要 |
私は広視野ガンマ線観測のため、ガス飛跡検出器(TPC)とシンチレーションカメラ(PSA)からなる電子飛跡検出型コンブトンカメラ(ETCC)の開発を行ってきた。 本年度は、前年度までに行ったプロトタイプ型ETCCの開発で問題となった点を考察し、気球搭載型ETCCの構築を成功させ、2013年3月の日本物理学会にてその結果を報告した。 (i)シミュレーションによる検出効率の評価 モンテカルロ法を利用した物理過程シミュレータであるGeant4を用い、検出器の動作原理と解析原理を、独自のアイデアで検出の検出器内で起こる物理過程に置き換え、検出効率をシミュレーションした。得られた結果は、本年度夏季までに行われた小型ETCCによる性能評価試験において得られた実験値と20%以内でよく一致し、新しく開発した電子飛跡データ取得法において物理過程を検出器内で正しくとらえていることを明らかにした。 (ii)熱環境試験の実施と熱設計の見直し 構築した気球搭載型ETCCが気球高度の低温低圧環境下で動作するかを模擬するため、ISAS/JAXA相模原において宇宙研気球グループが所有する真空恒温槽を用いて、熱環境試験を行った。その結果、前回行った気球試験の挙動と異なり、-40度以下になると与圧容器を含むシステム全体が冷え過ぎることを新たに発見した。これを分析した結果、問題解決には与圧容器表面の放射率を適切になるよう材料選定すれば有効であることを熱収支モデルの構築により明らかにした。 (iii)ガンマ線バースト検出可能性の評価 長期の気球フライトでは、ETCCの広視野を活かして突発的に輝く天体現象の観測が期待できる。私はこの点に着目し、これまで観測されたガンマ線バースト(GRB)の光度をもとに気球搭載型ETCCで観測した場合にどの程度観測結果が得られるかを数値計算し、その結果をGRB研究会2012にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該研究において、目標であるでのガンマ線観測気球実験は、気球の打ち上げを管轄する宇宙科学研究所は、北海道大樹町での理学観測気球実験を、近年の気候変化などの厳しい放球条件を理由に実施しない運びとなった。これに対し、ガンマ線気球観測実験をスウェーデンのキルナにて2週間の極周回観測をいきなり行えるよう、熱真空環境試験を2月に行うなど、放球に向けた万全の態勢を目下整えている。また、検出器においては当初の目標であった有効面積を10倍以上改善する見通しとなり、この点は当初の計画以上の成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後気球観測実験を遂行するためには、全システムを統合した熱環境試験を行い、適切な温度範囲で動作するように熱設計の改良が最重要項目となる。これに対し、アルミ蒸着マイラーを利用し、系表面の熱の放射率を0.3程度に下げることで平衡温度がセ氏0度から20度程度になるように対策を講じる予定である。
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