研究課題/領域番号 |
11J00609
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯田 佑輔 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 太陽 / 光球 / 磁場 / 対流 / 乱流 |
研究概要 |
本年度は大きく二つの研究を行った。自動判別コードを用いた太陽静穏領域における磁極活動の定量化(以下、課題1)、もう一つは観測結果を用いた磁気化学方程式の数値計算(以下、課題2)である太陽表面磁場構造がどのように作られるかは、太陽ダイナモや太陽表面活動の統計的頻度を理解するために重要である。Parnell et al,(2009)により、磁極の磁束量のべき分布が報告された。しかし、それが表面で作られているか、太陽表面下のダイナモ作用で作られた磁場構造を反映しているのか分かっていない。本研究では、豊富にある太陽観測データを解析することで、観測からの区別を目指した。課題1では、ひので衛星の磁場データに本研究者達が開発した磁極の分裂、合体、出現、消滅の自動判別コードを適用することで、各過程の頻度を求めた。その結果から、表面作用がどの程度作用しているのか、どの過程が支配的であるのかを議論した。これら4つの素過程を定量したるのは本研究が初めてである。結果、表面の4つの素過程が大きく作用していること、その中では分裂と合体現象が非常に大きいことが分かった。これらから、磁極が出現し、それが分裂と合体によって決まる磁束量分布になり、対流によるランダムな動きによってぶつかりつなぎ変わった磁極が一度沈み再浮上する、という全く新しい定性的な描像を提案した。課題2では、課題1で提案した描像を定量的に確かめるために、観測から得られた各過程頻度を用いて磁束量分布変化の数値計算を行った。その結果、初期条件によらず提案した描像と一致する平衡状態になることが確かめられた。これは、本研究者達が提案した描像を強く支持するものである。また、最終的な平衡状態は、各過程の頻度分布を一桁変えることで、大きく変化することも確かめられた。本年度の研究により、静穏領域の磁束量分布形成についての新しい描像を強く提案できたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画では、開発した磁極と磁極活動の自動判別コードを静穏領域の観測データに適用することであった。本年度は、予定した観測データへの適用のみならず、その結果を用いて基礎方程式の数値計算を行うことができた。その結果は、本研究者達が提案した描像を支持するものであった。これにより、計画よりも定量的な議論できるようになった。この点において、当初の計画よりも"太陽光球磁極活動の定量化とそのダイナミクス"について理解できたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画通り、活動領域の観測データに自動判別コードを適用する。このときに、自動判別コードについて改良が必要になると思われる。また、本年度の研究会や論文などで、コロナホールや太陽の極域といった部分の磁束移流が着目されつつある。それらの領域にも本研究のコードを適用することを計画している。また、これまでにほとんど着目されていなかった磁極の分裂・合体現象が重要であることが本研究で示された。そのことから、これらの物理過程の原因を探るために、偏光スペクトルデータを用いた解析も、時間が許せば行おうと計画している。
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