研究課題/領域番号 |
11J00645
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
利根川 翔 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 重い電子系 / 超伝導 / 隠れた秩序 / シンクロトロン放射光 / ネルンスト |
研究概要 |
重い電子系超伝導体URu2Si2において転移温度Th=17.5Kに観測される比熱の大きなとびを伴う二次相転移に関して、未だに秩序変数が明らかにされず、「隠れた秩序」と呼ばれる四半世紀にわたる大きな謎となっている。またこの物質は超伝導相が隠れた秩序相に内包されており、その超伝導発現機構を研究する上で隠れた秩序を解明することは非常に重要である。そこで我々はシンクロトロン放射光を用いた精密X線構造解析を低温で行い、隠れた秩序の相転移温度17.5K以下でわずかな斜方晶歪みが出現することを観測した。この結果は、昨年行ったサイクロトロン共鳴による電子構造の決定により明らかにした特異な異方性から類推した、4回回転対称性を破る電子ネマティック液体とよばれる状態になっていることを裏付ける物であり、さらに磁場をかけない状態で本質的に4回回転対称性を破っていることを明確に示した点で、非常に重要な結果である。また隠れた秩序相と超伝導状態に関して同じ物質の熱電係数を測定したところネルンスト係数に関して超伝導転移温度より2倍以上高い温度から急激に増大していることが明らかとなった。この結果は銅酸化物高温超伝導体などにも観測されており、そのアナロジーからURu2Si2においても超伝導揺らぎが発達していることが考えられる。またこの振舞いは上部臨界磁場よりもはるかに高い磁場でも観測されたことから、URu2Si2は超伝導が完全に壊れているような広い磁場・温度領域で超伝導揺らぎが発達した特異な電子状態を持つ系であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は重い電子系超伝導体URu2Si2の隠れた秩序相に関して放射光測定により、その研究が大きく進展した。また熱電係数測定により大きな超伝導揺らぎが生じている新奇な電子状態を発見した。これらの結果から研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ピエゾ素子を用いて圧力中の熱電係数を測定することにより重い電子系超伝導体URu2si2の隠れた秩序相におけるネマティック電子状態を明らかにする。またトンネルダイオード発振器を用いて超伝導対称性について議論したい。
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