研究課題/領域番号 |
11J00696
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石森 一 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2014-03-31
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キーワード | フレーバー対称性 / ニュートリノ振動 / 世代混合 |
研究概要 |
採用第3年度行ってきた研究では、レプトンとクォークの世代構造に対して模型に依存いない方法でフレーバー対称性の予言の可能性について調べた。これまでは様々な模型が考案され、模型ごとに標準模型の粒子の質量と混合を予言されてきた。高エネルギー実験と矛盾のない模型を作るためには、フレーバー対称性を上手く破る必要がある。このためには、一般に、現在の実験で到達できない非常に高いエネルギースケールの質量を持つスカラー粒子を数多く導入する必要がある。その多くのスカラー粒子が真空で期待値を持ち、フレーバー対称性を破ることになる。真空の期待値はスカラー場に数値を代入し、ポテンシャルが最も低くなる所を探すことで得られる。このときのポテンシャルがゼロ以下であれば何もない真空よりも、スカラー場に値がある方が安定することになる。そのときのスカラー場の数値はポテンシャルの関数に依存し、フレーバー対称性の破れ方が異なる。このように、模型ごとにスカラー場の真空期待値やスカラー粒子の質量などが異なり、それぞれの模型で複雑な計算が必要になる。それぞれの模型は数多くのパラメータに依存し、ポテンシャルの関数を決めた後、フェルミオンの質量や世代間の混合を予言する。これらの予言を模型に依存せずに計算する手法を考案した。我々の手法では質量と混合を導く質量行列にフレーバー対称性が残っていると仮定して、対称性ごとの質量や混合の値を予言する。フレーバー対称性はあるエネルギースケールでスカラー場に依存して破れるが、模型によっては実験で観測できるエネルギースケールで別の対称性が残っている。一般に、フレーバー対称性にはいくっかの部分群があり、クォークセクターでは、アップクォークとダウンクォークの質量行列に別々に残すことができる。それぞれの対称性により、混合行列が決まり、対称性の種類を選び出すことで混合角が計算できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画してある研究についておおむね順調に論文にまとめることができている。特に、ニュートリノ振動の実験について新しい結果が次々と現れているのでそれらを説明するように模型の改良、計算の見直しを進めている。より精密な実験結果が得られたことで研究は進展しやすくなる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで行ってきた研究を進展させていく。現段階では特に問題がないのでより優れた模型の構築を行い、より自然に質量や世代混合が説明できる模型を探る。また、模型に依存しない方法で質量や混合の関係を導く方法も探る。特に、今後の実験でレプトンのCPを測る実験が始動しているので、CPについての物理的に自然な方法で予言することを目指す。
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