研究課題/領域番号 |
11J00727
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木河 達也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | ニュートリノ振動 / T2K実験 / J-PARC / スーパーカミオカンデ / ニュートリノ反応断面積 / ニュートリノ検出器 / MPPC |
研究概要 |
T2K実験ではJ-PARCの加速器により生成されたニュートリノを生成点直後の前置検出器と295km離れたスーパーカミオカンデで観測することにより未発見の電子ニュートリノ出現事象を探索している。今年度は物理統計の増大と解析方法の改善により、昨年度示唆した電子ニュートリノ出現の確度を3.2σまで向上させた。T2K実験はニュートリノビーム方向のずれに非常に敏感であり、また前置検出器とスーパーカミオカンデにおいて異なった期間のデータが解析に用いられるため、全期間におけるニュートリノビームの方向と強度の安定性を保証することが不可欠となる。そのためニュートリノ検出器INGRIDによりニュートリノビームの方向と強度を監視している。今年度においては自ら開発した新しい解析方法と誤差の見積もり方法によりビーム測定の系統誤差を約1/4に抑制した。さらに解析プロセスをすべて自動化させ、最新の解析結果がいつでもWeb上で確認できるシステムを構築した。それにより測定されたニュートリノビーム強度が安定していること示し、T2K実験の物理データを保証し、上記の物理結果に大きな貢献をした。ビームの安定性の検証についてはINGRID以外にもT2K実験のあらゆる検出器の測定結果を期間ごとに比較し、包括的な検証をした。またT2K実験の振動解析においてニュートリノ反応の不定性に起因する系統誤差が大きいため、ニュートリノ検出器Proton Moduleを用いてニュートリノ反応断面積の精密測定をしている。今年度においては、あらゆるニュートリノ反応モードについての基本的な解析方法と系統誤差の見積もり方法を確立し、さらに系統誤差の原因となっているバックグラウンドやデータとシミュレーションにおける検出器性能の差を大幅に抑制することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T2K実験におけるデータ取得は震災による遅れを取り戻すほど順調に進められている。本研究課題における測定については、INGRIDにおいて問題となっていたイベントパイルアップの問題も解決し、ビーム測定はいたって順調である。Proton Moduleにおける反応断面積の測定もすべての解析がほぼ完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
INGRIDによるニュートリノビームの測定は、T2K実験においては不可欠な測定であり、今後も継続して行っていく。 Proton Moduleにおけるニュートリノ反応断面積の測定は2013年の夏までの物理データを元に鉄と炭素の反応断面積比と荷電カレント反応断面積、荷電カレントコヒーレントπ生成断面積の結果を出す予定である。2013年夏以降は、INGRIDによるビーム測定とProton Moduleによる反応断面積の結果を反映させて、振動解析を行っていく予定である。
|