研究概要 |
本研究の目的は量子力学的もつれを利用した高い同時性をもつ光子対の発生である。当該年度では前年度実施されたチャープ擬似位相整合素子を用いた超広帯域光子対発生実験について論文を執筆し、Optics Express誌に掲載された(Opt.Express20(23),25228-25238(2012)。 今年度の実験状況については、時間領域トモグラフィに先立ち、光子対の周波数相関測定を実施した。その結果、65THzという世界最大の帯域幅を持つ周波数相関光子対の直接測定に成功した。実験では光電子増倍管(浜松ホトニクスとの共同研究)を用い、励起光パワーを最適化した。測定結果が周波数領域の波動関数の絶対値の自乗に比例していることから、部分的であるが二光子波動関数のトモグラフィを実施できたといえる。 また当初予定していた和周波発生実験を修士課程の学生及びボスドクが実施する方針に変更し、密な議論を重ねた結果相関光子対の和周波発生に成功した。実験は5Wの励起光、非チャープMgSLT結晶を光子対の発生及び和周波の発生に用い、毎秒20カウントの和周波発生信号を記録した。和周波発生の測定結果が時間領域の波動関数の絶対値の自乗に比例していることから、時間領域トモグラフィに向けた今後の実験を加速させるものと考えられる。 チャープ補正については理論計算の結果、分極反転周期のチャープ方向を反転することで群遅延分散が7400fs2から240fs2まで減少することが判明した。これはより単純な二光子波動関数の圧縮方法として素子の向きを逆にするとよいことを意味する。 また共著者として同誌に2編の論文が掲載された(Opt.Express20(13),13977・13987(2012),Opt.Express20(17),19545・19553(2012)。さらに学会活動として米国で開催されたSPIE Photonics West2013に紀要を執筆し、口頭発表を行い、米国にある2研究室を訪問、セミナーを開くなど対外的に活動を行った。
|