研究課題
本研究の目的は量子力学的もつれを利用した高い同時性をもつ光子対の発生である。当該年度では前年度実施されたチャープ擬似位相整合素子を用いた超広帯域光子対の量子もつれを評価すべく、1. 超広帯域周波数相関の直接測定、及び2. 二色量子干渉を用いた周波数量子もつれの特性評価、の二点について主体的に実験的研究を実施した。また量子計測科学への応用に向け、超伝導単一光子検出器の評価及び量子OCTの実現に関する2編の論文が共著者として出版された(Jpn. J. Appl. Phys. 52, 102801 (2013), Phys. Rev. A88, 043845 (2013))。1. 前年度実施された光子対の周波数相関測定を継続し、モノサイクル時間もつれが可能である光子対に対して相関測定を実施した。その結果、相関幅が192THzである世界最大の周波数相関幅測定に世界に先駆けて成功した。実験では光電子増倍管(浜松ホトニクスとの共同研究)とSiアヴァランシェフォトダイオードを用い、二光子波動関数の周波数領域の情報(絶対値の自乗)を読み出す事に成功した。2. 1.と同様の広帯域光子対を発生させ、二色の周波数フィルターを有するHong-Ou-Mandel干渉計で二色の光子対の量子もつれを評価した。フィルターの透過周波数差が最大177THzまでの5通りの二色量子状態につき、最大もつれ状態との忠実度が全て古典限界の70%を破る89%以上という結果を得た。干渉計の位相雑音の評価により、フィルタリング前の超広帯域光子対は高い純粋状態である事が予測される。これは時間領域でも純粋状態である事を意味し、実験に用いたチャープ素子でモノサイクル量子もつれ状態が可能である直接の証拠となる。また光子対の和周波発生については、引き続き修士の学生に理論面で詳細な議論を行い実験を担当してもらった。光子対のモノサイクル化に向け、プリズムペアを用いた分散補償系を導入し、非チャープ素子の光子対の和周波発生効率が9倍増加した。これは二光子波動関数の時間領域操作に相当し、今後の時間領域二光子エンジニアリングに道を開くものと期待される。
(抄録なし)
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: 52 ページ: 102801-1-102801-5
10.7567/JJAP.52.102801
Physical Review A
巻: 88 ページ: 043845-1-043845-5
10.1103/PhysRevA.88.043845