今年度は、(1)前年度に開発した低コスト・ハイスループットRNA-Seq法によるシロイヌナズナ及び近縁種での大量トランスクリプトームデータ取得と、(2)コンロンソウのRNA-Seqを用いた野外環境下における地下茎トランスクリプトーム解析を行った。 (1)本研究では大量のトランスクリプトームデータの取得が必要になるが、市販のmA-Seqライブラリ調製キットを用いた場合、およそ5万円/サンプル・10サンプル/週のコスト・労力がかかり多検体の解析は現実的ではない。 これを回避するために独自の低コスト・ハイスループットライブラリ調製手法を確立した。各反応ステップにおける反応系容量・精製手法などの見直しと最適化などによって、大幅なコスト・労力の削減が可能となった(2000円/サンプル・100サンプル/週)。この低コスト・ハイスループットRNA-Seq法によって、これまでに野外環境下で収集を進めてきたシロイヌナズナ近縁種のRNA、500サンプル以上のトランスクリプトーム解析を実現した。 (2)コンロンソウ(Cardamine luecantha)はシロイヌナズナと同じアブラナ科に属する2倍体野生植物で、日本国内においても広く自生している。このコンロンソウは、地下茎によるクローン生長と、地上葉をつくる栄養生長、花をつける繁殖生長を、季節によって切り替えている。地下茎によるクローン生長は、多くの植物で見られるが、シロイヌナズナでは存在しないため、その分子的解析はほとんど行われていない。そこで、コンロンソウの地下茎や他の組織のトランスクリプトーム解析を行い、分子レベルから地下茎の特徴を明らかにすることを試みた。その結果、地下茎は解剖学的には茎頂分裂組織に由来する器官であるにもかかわらず、トランスクリプトームとしては葉や花といった地上器官よりむしろ根に近いということが明らかとなった。
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