研究課題/領域番号 |
11J00772
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
岡澤 剛起 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 視覚 / 質感 / 機能的核磁気共鳴画像法 / マカクサル |
研究概要 |
ヒトの日常的な視覚経験においては物体表面の光沢やテクスチャといった表面質感の視知覚が、果物の鮮度の判断から素材の分類、さらには高級感などの感性的判断に至るまで重要な役割を果たしている。本研究の目的は、このようにヒトが物体表面の質感を知覚する神経メカニズムを明らかにすることである。そのため、本年度にはヒト視知覚のモデル動物であるマカクサルを用い、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いることで、質感に応答する脳領域を同定することを計画し、実験を行った。実験には二頭のサルを用い、MRIスキャナの中で注視課題を行わせた。視覚刺激には、光沢のある物体、光沢のない物体、それぞれのスクランブル画像の4条件を用意した。スクランブル画像はウェーブレットフィルタを用いて局所的に輝度の位相をランダマイズすることにより作成した。実験の結果、二頭のサルで初期視覚野(V1~V4)に加え、下側頭皮質(IT野)のいくつかの限局した領域において4条件のうち光沢のある画像に対して最も強い応答が見られた。また追加の実験により、これらの領域の応答は画像のコントラストへの応答では説明できないことが示された。これらの結果は、マカクザルの初期視覚野と下側頭皮質の限局された領域において物体表面の質感が表現されていることを示唆している。本研究は、サル視覚野で質感に応答する領域をfMRIではじめて明らかにしたものであり、今後の質感処理メカニズムの研究の土台となる意義を持つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、我々が物体表面の質感を知覚するメカニズムを明らかにするため、(1)機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)により質感画像を注視中のサルの脳活動を全脳で計測することで、質感処理にかかわる領域を同定し、(2)同定された領域に微小電極を刺入して単一神経細胞の質感画像に対する応答を記録し、光沢感などの心理指標や画像統計量との相関を解析する、という2つの課題を遂行することである。(1)については本年度に実験を終えて論文投稿中であり、(2)については現在、サルの訓練や呈示画像の準備を進めているところであり、今後順調に進展すれば目的を達成できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
質感処理のメカニズムを詳細に検討するため、質感に関連すると考えられる脳領域に微小電極を刺入して単一神経細胞の記録を行う。当初の研究計画のとおり、記録の際には様々な質感やテクスチャを持つ画像を呈示し、得られた神経応答と画像特徴との相関をとることにより、神経細胞がどのような画像特徴を元に質感を判断しているかを明らかにする。現在すでにサルの訓練を行っており、実験システムの作成も同時に遂行中である。
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