研究課題/領域番号 |
11J00778
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
東山 大毅 神戸大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | 脊椎動物 / 三叉神経 / 顎 |
研究概要 |
脊椎動物の顎や顔面の形態は、咽頭胚の頭部にある第一咽頭弓とその前方にある顎前領域より構成される。特に大部分の顎口類の上顎はこれら二つの領域の間葉が組み合わさって生じるが、しかし上顎を構成する各要素の由来やその進化的経緯は明らかでない点が少なくない。本研究では中でも、これまで一般に第一咽頭弓の要素に数えられてきた、三叉神経の上顎枝に着目した。 本年度は各系統の動物の胚を用いて、形態的に上顎神経の発生の比較を行った。 まず、第一咽頭弓に由来する上顎突起と顎前領域とを用いて上顎を構成する動物を対象とした。免疫組織化学染色によって神経枝を可視化し、形態観察を行った結果、マウス(Mus musculus)では上顎枝の一部が、上顎突起のみならず顎前領域にも分布することを確認した。ただし、ニワトリ(Gallus gallus)とソメワケササクレヤモリ(Paroedura picta)ではこうした分枝が確認されなかった。チョウザメ(Bester)、トラザメ(scyliorhinus torazame)など一部の動物の上顎は上顎突起のみで構成され顎前領域がほとんど参与しない。これらの動物において、上顎枝は上顎突起のみならず、さらに前方の吻部にも分布することが確認された。チョウザメを用いて組織切片からコンピュータ上で三次元モデルを構成した結果、中胚葉との位置関係から、吻部の分枝はその発生の初期段階ですでに第一咽頭弓ではなく顎前領域に分布していることが分かった。 以上の結果は、顎口類における上顎枝の分布が顎前領域と上顎突起の両方にまたがることを示している。上顎突起の生じない円口類のヤツメウナギでも、上顎枝に似た神経枝が顎前領域に分布する知見を考慮すると、顎前領域に神経枝を伸長させる発生上の機構は、顎をもたない段階ですでに存在した可能性が示唆される。よって上顎枝のうち上顎突起に分布する成分は、顎口類の系統で新規に獲得されたものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度中に両生類を含め、顎口類の三叉神経の形態観察は終わらせる予定だったが、達成できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
系統的考察を推し進めるため、両生類アホロートル(Ambystoma mexicanum)と、チョウザメと同じ条鰭類であるゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いて同様の解析を進めている。 また、顎口類のそれぞれの動物のもつ顎前領域の神経枝が、どこまで同じものなのかを調べるため、末梢神経のトレース実験により、ヤツメウナギをも含めた各動物での三叉神経節や脳における核の位置を比較する予定である。
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