研究課題
本研究では、新規生体金属触媒の創製を目的として、酸素結合タンパク質DcrH-Hrの活性中心であるカルボキシラート架橋二核鉄中心の改変および機能変換を実施している。カルポキシラート架橋二核鉄中心を有するタンパク質は、酸素分子を利用して様々な生体内化学反応を支援している。なかでも直截的かつクリーンな反応経路で不活性C-H結合を活性化するメタンモノオキシゲナーゼの酸素活性化能は非常に魅力的であるが、複雑な構造を有しており取り扱いが難しい。そこで、シンプルな構造かつ大腸菌による大量発現が可能であるカルボキシラート架橋二核鉄中心を含有するDcrH-Hrを研究対象とし、錯体化学的な知見に立脚した合理的な活性中心の再設計によって、本来備わっている酸素結合能から外部基質の酸化活性能への機能変換をめざしている。昨年度までに、二核鉄中心近傍に位置するIle119の配位性アミノ酸残基への置換が二核鉄配位圏の改変に有効であることを見出しており、本年度は野生型DcrH-Hrと異なる挙動を示すI119E変異体とI119H変異体について詳細な機能解析を行った。I119E変異体では、Glu119の二核鉄中心への配位が結晶構造解析より確認されている。しかし、pH依存的な外部配位子との結合挙動や活性中心の酸化還元電位の変化が観測されたことより、Glu119の配位能は、そのカルボシラートのプロトン化の程度に大きく影響を受けることが明らかとなった。さらに、I119H変異体では、本来の酸素結合能から過酸化水素駆動の外部基質の酸化能への機能変換が破認された。共鳴ラマン分光法および極低温での赤外分光法より、I119H変異体では、His119が二核鉄中心に結合した外部配位子と相互作用していることが明らかとなった。二核鉄中心に結合した過酸化水素に対してHis119が相互作用することによって酸化能が発現したと考えられる。このように当初の目的である二核鉄第一配位圏の改変および第二配位圏の改変による機能変換を達成した。
(抄録なし)
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Chemical Communications
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10.1039/c3cc48108e
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http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~hayashiken/