到来方向に感度を持つ手法を用いてDAMA領域を探索するために、約1000倍の感度向上を狙った検出器改良を行っている。10倍をエネルギー閾値の低下で、10倍をバックグラウンドの低下で、10倍を大型化で達成する予定であり、エネルギー閾値の低下とバックグラウンドの低下に関しては昨年度にめどをつけることができた。本年度では、これらの改良を地下実験へ適用するための準備を行ってきた。 地下実験を行うにあたり、検出器μ-TPCのドリフトケージの素材を低バックグラウンド素材であるPEEKを用いて作り直した。このとき、ドリフトの長さの最適化を行った。ドリフト長が長いと暗黒物質に対する標的が増えるが、電子拡散により角度分解能が悪化する。角度分解能の測定データを解析的にドリフト長を変化させ、暗黒物質に対する感度が最も良くなる長さを40cmと決めた。作製した検出器は地上において基本的な動作確認を行い、問題なく動作する検出器を作ることに成功した。 データ取得方式について、角度分解能の向上が見込めるため、新しいデータ取得システムを導入した。これは、以前までは取得できなかったヒット情報やTime Over Thresholdを取得できるようになるシステムである。今回の新しいデータ取得システムの導入に伴いFPGAのデバッグを進め、初めて30cm角全面のμ-PICを用いての新しいデータ取得システムの動作に成功した。 昨年度に作製したラドン除去のための冷却活性炭を用いたガス循環システムを地下に持ち込むにあたり、より安定した動作と、外部からネットワーク越しに状態確認を可能にするため、冷媒の液面計、新温度調節器、流量計を導入し、測定値を常にモニターできる環境を構築した。 これらの地下実験用の改良を施した検出器を3月末に神岡地下の実験室に運び込み、基本的なデータの取得を開始、破損等がなく動作することを確認した。
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