研究課題
これまでの研究により、私たちはTh17細胞由来のIL-17がIL-6とともに線維芽細胞に働くと、NF-κB、STAT3の活性化依存的に「相乗的なIL_6及び炎症性ケモカイン産生の亢進(IL-6アンプ)」が起こり、F759関節炎及び多発性硬化症モデルEAEを発症させることを証明した。本研究の目的は、IL-6アンプの詳細な分子メカニズムを解明し、自己免疫疾患の発症原因を明らかにすることである。BC-1細胞を用いた75000種類のshRNAスクリーニングを行った結果、IL-6アンプを制御する候補分子として1000分子以上が挙げられた。本研究では候補分子のうちのEGFRに着目し、EGFRシグナルがIL-6及びIL-17と協調的に働いてIL-6やCCL20,1κBζ等のIL-6アンプのターゲット分子の発現をさらに亢進することを明らかとした。このEGFRシグナルによるIL-6アンプの活性化亢進はPI3Kα-NF-κB経路の活性化に依存していた。興味深いことに、IL-6アンプの活性化によりEGFファミリーの一員であるEpiregulinの発現が誘導され、線維芽細胞にオートクラインに作用してIL-6アンプの活性化をさらに亢進することも明らかとなった。さらに中和抗体やsh-RNAを用いてマウスの関節局所でEpiregulinの発現を抑制すると、サイトカイン誘導性関節炎モデルの発症が抑制され、滑膜組織におけるIL-6とEpiregulinの発現も抑制されていた。EGFRのチロシンキナーゼ阻害剤では関節炎モデルだけでなく、EAEの発症が抑制される結果も得られている。重要なことに、関節リウマチ、多発性硬化症、動脈硬化患者の血清中では健常者に比べてEpiregulinが高値を示したことから、Epiregulinが自己免疫疾患及び慢性炎症性疾患の新規治療薬ターゲットとなることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
本研究ではEGFRシグナルがNF-κBの活性化を増強してIL-6アンプ活性化を亢進することを見出した。現在Immunity誌掲載のためにリバイス実験を行っていることから順調に進展していると考えられる。
今後の方針としては、まずスクリーニングによって得られたIL-6アンプを制御する候補分子の結果とEpireguilnによるIL-6アンプ活性化に関する結果を原著論文として報告する。またEGFR以外の分子についても当初の計画通り、関節炎モデルを用いたIn vivoの評価やChIPアッセイ、プロモーター解析等の分子機能に関する結果が得られており、より詳細かつ独創的なIL-6アンプ活性化の分子機構の同定を目指す。
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Cell
巻: 148(3) ページ: 447-457
10.1016/j.cell.2012.01.022
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molonc/www/