研究課題/領域番号 |
11J00819
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
原田 誠也 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | IL-6 / IL-17 / Epiregulin / 増殖因子 / ゲノムワイド連鎖解析 / 自己免疫疾患 / 上皮成長因子受容体 / 創薬標的 |
研究概要 |
本研究の目的は、IL-17とIL-6信号伝達経路の相乗効果(IL-6アンプ)の詳細な分子機構を解明することである。昨年度までに、上皮成長因子(EGFR)のリガンドであるEpiregulinの発現がIL-6アンプの活性化によって誘導され、Epiregulinは自身の増幅ループを形成し、さらにIL-6アンプを増強することで自己免疫疾患の発症に寄与するという新規概念を示した。さらに、EpiregulinはPI3Kα-NF-κB経路の活性化を亢進することでIL-6アンプを増強することが分かり、IL-6アンプの分子機構における新たな知見を見出している。本研究の成果は、平成24年度の3月にCell Reports誌に掲載された。 本年度は、Epiregulin以外に、16種類の可溶性分子がIL-6アンプの活性化をfi進することを発見した。その中で、関節リウマチ患者及び多発性硬化症患者の血清中で高値を示した増殖因子であるAmphiregulin、Betacellulin、TGF-α、FGF2がF759関節炎モデル及び多発性硬化症モデルEAEの発症に重要であることを証明した。さらに、F759関節炎においては、初期の段階で滑膜組織におけるEpiregulinの発現が亢進し、後期に上記の増殖因子の発現がEpiregulin依存的に亢進した。すなわち、IL-6アンプの活性化によってEpiregulinの発現が充進した後、Epiregulinは増殖因子群の発現を誘導することでさらにIL-6アンプを増強するという時空間的制御機構の存在が示された。本研究の成果は、現在論文投稿中である。 これらの成果により、IL-6アンプの分子機構において上記の増殖因子とPI3K-NF-κB信号系が重要な役割を担うことが明らかとなった。また、自己免疫疾患の新規創薬標的を提案した点においても本研究は非常に意義深いものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度には、サイトカインや神経伝達物質、増殖因子といった16種類の可溶性分子がIL-6アンプの活性化を亢進することを明らかとした。その中で、関節リウマチ患者及び多発性硬化症患者の血清中で高値を示した増殖因子であるAmphiregulin、Betacellulin、TGF-α、FGF2、PLGF、Tenascin CがF759関節炎モデル及び多発性硬化症モデルEAEの発症に重要であることを証明した。さらに、IL-6アンプの活性化によってEpiregulinの発現が亢進した後、Epiregulinが上記の増殖因子群の発現を誘導することでさらにIL-6アンプを増強するという時空間的制御機構の存在を証明した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、IL-6アンプと増殖因子群の相互作用によって慢性炎症性が増悪することを証明したいと考えている。具体的には、「IL-6アンプの活性化により、Epiregulinの増幅ループが形成され、Epireguliinは自身及びArnphiregulin、Betacellulin、TGF-α、FGF2、PLGF、TenascinCの遺伝子発現を亢進することでさらにIL-6アンプを増強し、自己免疫疾患の発症に寄与する」という新規概念を提唱する予定である。さらに、製薬会社との共同研究により, 本研究で提案された創薬標的分子を阻害する化合物又は中和抗体を作製し、より副作用の少ない自己免疫疾患の新規治療薬開発を目指す。
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