共役系高分子は優れたエネルギー、電子の輸送を実現する系であり、その構造を制御することは輸送系の高効率化、新たな機能発現につながる。本研究では剛直な共有結合骨格を利用することで、以下二つの構造制御を試みた。 1)縮合反応を用いた芳香環積層分子の合成 これまでに合成されている共役系分子は、spならびにsp^2炭素の結合からなる結合型の分子が大部分を占めており、積層した芳香環からなるπスタック型分子の合成例は極めて希である。本研究では、一次構造が明確な共役系オリゴマーであるオリゴフェニレン誘導体を積層ユニットとして選択し、これをリンカー分子と縮合反応により連結することで、πスタック型の環状分子を選択的に合成し、その光学特性について検討を行った。得られた環状二量体において、向かい合ったオリゴマー同士の軌道の重なりが大きくなるにつれ、相互作用が強くなり、励起状態での相互作用に由来した分子内エキシマー発光が観測された。 2)高分子反応による積層構造の構築 コの字型構造の剛直なリンカー分子を芳香環と連結させることで、芳香環が積み重なった構造を有する、芳香環積層高分子が得られる。本研究では、芳香環積層高分子を構造制御の足場と捉え、高分子反応による、低分子色素団の積層配列を行った。積層構造を有する高分子前駆体を合成し、高分子反応を行うことで、様々な芳香環を積層構造に導入することに成功した。この手法を用いることで、これまで困難であった、π平面が広く、立体障害の大きな芳香環を積層させることに成功した。得られた積層構造は、外部条件に左右されず安定であり、溶液中においても単一分子内で積層した構造が維持されることが確認された。
|