研究概要 |
von Hippel Lindau病は腎細胞癌等を主徴とする常染色体優性遺伝性疾患であり、その原因遺伝子であるVHLは孤発性腎細胞癌でも50%以上で変異が報告されている。VHL遺伝子産物であるpVHLの本態は複合体型ユビキチンリガーゼの基質認識サブユニットであり、低酸素応答のマスター分子であるHIF-aに酸素依存的にユビキチン付与を行い、分解へと導く。この機構のおかげで、細胞は通常酸素下で低酸素応答が抑制され、低酸素状態において迅速な低酸素応答を惹起することができる,pVHLが欠損すると、通常酸素下でも低酸素応答が惹起されることになり、血管新生や嫌気性解糖の亢進などにより腫瘍形成が促進される。VHL病の病態のいくらかは、HIF-aの発現量の亢進によって説明できる一方、繊毛形成異常による腎のう胞などHIF-aだけでは説明できない病態も数多く報告されている、しかし、これまでにVHL病の病態を説明しうるようなHIF-a以外のpVHLの基質はほとんど明らかになっていない。 そこで私は、プロテオミクスによりpVHLの基質を同定し、その機能的意義を明らかにすることを試みた。具体的には基質にユビキチン付与を行うことができない変異体を作成し、野生型及び変異体pVHLの結合タンパク質をLC-MS/MSで網羅的に同定した。この中には当然非特異的な結合タンパク質も数多く含まれてしまうため、野生型pVHLの結合タンバク質との比較を行い、変異体のみに結合してくるタンパク質を基質候補として同定した.本年度は同定された基質候補が、pVHLによりユビキチン化され、分解に導かれるかどうかの検証実験を行なった,驚くべきことにbVHLはユビキチンリガーゼ活性非依存的にこの分子の機能を制御し、この分子の機能異常がVHL病の病態と深く結びつくことを明らかにした。
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