研究課題/領域番号 |
11J00855
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大橋 勢樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 重力崩壊 / 特異点 / ブラックホール / 宇宙検閲官仮説 |
研究概要 |
一般相対性理論では物理的に妥当な条件下で、一般に特異点が発生することが知られている。特異点とは大雑把には、重力の強さを表す時空の曲率が無限大に発散する点である。特異点の形成は一般相対性理論の破綻を意味する。そこで、もし重力崩壊の結果特異点が生じブラックホールのホライズンに囲まれていない裸の特異点が生じると、それより未来は予言不能になってしまう。通常一般相対性理論ではそのような事態を避けるために、重量崩壊の結果生じる特異点はプラックホールのホライズンに隠されていると仮定する(宇宙検閲官仮説)。これは、これまでの一般相対性理論を用いた考察の妥当性を保証する上で非常に重要な仮定であるが、この仮定の検証はいまだ十分にはなされていない。 先行研究では主に4次元球対称時空での重力崩壊モデルで解析が行われており、それによると初期の物質の分布によって裸の特異点が生じるとこが知られている。これは宇宙検閲官仮説の反例になっているように見えるが、実際には特異点が形成されるような強重力場は量子重力の効果が効いて裸の特異点の問題は解消されると思われている。量子重力理論の有力な候補の一つは超ひも理論である。この理論は高次元時空で定式化されており、重力理論に対して一般相対性理論への補正を予言している。以上のことから私は超ひも理論によって示唆されている量子重力の効果を古典的に取り入れた重力理論を用いて、重力崩壊で特異点が生じるか、またもし生じたらその特異点は裸になるかを調べた。具体的にはダストと呼ばれる圧力を持たない物質の重力崩壊モデルを考えた。その結果、(1)量子重力の効果を取り入れた重力理論でも、特異点が生じ初期の物質の分布によって裸になることを示した。また(2)一般相対性理論に比べて特異点での曲率の発散の仕方が弱まることを示した。この研究によって、通常量子効果を取り入れると裸の特異点の問題が解消されると思われていたが、古典的に取り入れたレベルでは、曲率の発散は緩やかにはなるものの裸の特異点の形成は一般には避けられないことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
宇宙検閲官仮説を量子効果を取り入れた重力理論で検証し、実際に裸の特異点が出現することを示した。この結果は量子効果を古典的に取り入れても裸の特異点の形成が回避できなかったことを示したという点で非常に満足のいくものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに一般的な状況下での宇宙検閲官仮説の検証を行う。またさらに、重力崩壊後の時空であるブラックホール時空の分類に関しても研究を行う。
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