研究課題/領域番号 |
11J00940
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森田 航 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アンデス / マヤ / 歯の形態 / 生物考古学 / 生物学的距離 / 集団移動 / 古人骨 |
研究概要 |
本研究の目的は、歯の形態データを用いて、中南米の古代文明形成過程における人の移動を解明することである。中米マヤ地域においては、先古典期から古典期にかけての時期、南米アンデス地域においては形成期を研究対象として設定している。本年度は主に南米アンデス地域について研究を進めた。8月から10月にかけて約2ヶ月間、ペルー北高地に位置するパコパンパ遺跡での発掘調査に参加し、歯の形態データを収集した。出土人骨の整理も平行して進め、一次資料のデータ化を行った。また近隣のクントゥル・ワシ遺跡に付属する博物館でも資料調査を行った。得られた歯冠計測値と歯の非計測的形質を用いて、形成期のパコパンパ、クントゥル・ワシ、カハマルカ盆地の3集団とクントゥル・ワシ遺跡のカハマルカ期集団との集団間の類縁関係の復元を行った。その結果、カハマルカ盆地の形成期集団が他の3集団から遠く、形成期のパコパンパ集団とクントゥル・ワシ集団のマハラノビス距離が最も小さかった。ここから、カハマルカ盆地の形成期集団の特異性は、標本の少なさによる偏りの可能性もあるが、遺伝的に隔離されていた可能性が示唆された。また、パコパンパ集団とクントゥル・ワシ集団は、相対的にではあるが、遺伝的に近縁な関係にあったと考えられる。この成果を12月の古代アメリカ学会で口頭発表した。マヤ地域については、これまで蓄積してきたデータを元に11月に京都メソアメリカ考古学研究会で口頭発表した。また中南米から出土する人骨の歯は咬耗の強いものも多く、これらの歯の形態を定量的に分析するため、新たに歯頚線に注目した解析法の開発も試みている。その成果を11月に日本人類学会で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、データ収集は進んでいる。また新しい方法論の構築にも目処がついてきた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続いてペルーにおける発掘調査に参加し、データ収集を行うとともに、同時代資料の充実に努める。またより詳細な歯の形態情報を抽出するための方法論の構築も進める。
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