研究課題/領域番号 |
11J00970
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 啓 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 国際裁判 / 事実認定 / 証拠 / 紛争処理 / 証明責任 / 推定 / 裁判手続 / 国際司法裁判所 |
研究概要 |
本研究は、国際裁判における証拠法論の生成と展開を辿ることを通じて、裁判過程において事実認定という局面がいかなる意義を備えるものであるかを明らかにすることを目的とするものである。 本年度はとくに歴史的な分析に重点を置いて研究を進めた。すなわち第1に、証拠法論における従来の知見を整理することを通じて、従来の通説的理論の背景に一定の政策志向を垣間見ることができることを明らかにした。そして第2に、伝統的国際裁判における裁判例を検討することを通じて、従来の通説の意義と限界を明らかにした。以上の成果を導くにあたっては、伝統的国際裁判例における関連判断部分をある程度網羅的にデータベース化する作業に加えて、米国・ワシントンD.C.に渡航し未公刊資料の収集・調査を実施した(米国国立公文書館および議会図書館)。調査対象は多岐にわたるが、特に証拠法論上の指導的先例として扱われてきた米墨一般請求委員会のParker v. United Mexican States(1926)判断の未公刊訴答書面を入手し、本事案における論争の種となった証拠資料である宣誓供述書の現物に接することができたことが最も重要な成果である。 収集した未公刊資料のより具体的な咀嚼は次年度の課題に持ち越されるが、いずれにせよ本年度の研究の結果、証拠法論の生成に対する戦間期という特殊な時代背景の影響の一端を見出すことが可能であるとの結論を得た。証拠法論の展開を歴史的に辿ることの意義は以上の意味において了解され、本年度の成果を現代国際裁判論へと架橋することを次年度の課題として設定し、これを博士論文としてまとめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集やデータベース化を通じて、おおむね当初設定した仮説の検証は進展している。他方、本年度はそうした資料の咀嚼に重点を置いたため、本年の研究成果は現段階では必ずしも論文草稿の活字としては反映されていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年の資料収集・判例咀嚼の具体的成果を論文草稿の活字へと反映させていくことが、次年度の課題である。なお、海外での資料収集は引き続き実施する予定である。
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