研究課題
本研究は、国際裁判における証拠法論の生成と展開を辿ることを通じて、裁判過程における事実認定という局面の意義とその本質を明らかにすることを目的とするものである。2年目は、本研究を博士論文「国際裁判における証拠法論の生成と展開」としてまとめ、暫定的に完成のかたちを見た。右論文では、国際裁判における証拠法論の従来の理解を〈客観的真実発見説〉として整理し、その政策志向性や限界を明らかにした上で、国際裁判における証拠法論の展開の裁判目的依存性という新たな視座〈裁判目的実現手段説〉を設定し、従前の理解との対比における事実認定の「正しさ」に関する理解の再考と、そうした視座に基づく個々の具体的解釈論を踏まえた証拠法論の再構成を試みた。具体的には、証明対象論、証明責任論、推定構造論、証明過程論、という4点に証拠法論上の問題群を整理し、個々の国際裁判制度(検討対象は常設国際司法裁判所・国際司法裁判所、国際仲裁、WTO紛争処理制度、国際投資仲裁)の目的に立ち返った上で比較検討を行った。制度目的に立ち戻った上で当該制度の解釈論的視座を画定するという手法は、それ自体としては極めてオーソドックスな実定法解釈の方法であるが、しかし両者の有機的な連関が必ずしも意識されてこなかった従前の議論状況を前提とすれば、そうしたオーソドックスな手法によって到達した本稿の結論は、国際裁判の証拠法論に新たな視座を提供するものと位置付けられる。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題は、研究代表者の博士論文として遂行してきたものであり、その提出は、本研究課題の暫定的な完成を意味する。もちろん、更に高水準のものへと引き上げた上での公刊を目指し、最終的な完成に向けて引き続き精進していく次第である。
本研究課題は、博士論文の提出という形で一応の完成を見た。今後は、書籍としての公刊を目標とした上で、博士論文の内容をブラッシュアップしていく予定である。
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University of Tokyo, Institute of Business Law and Comparative Law & Politics, IBC April 2011-March 2012
ページ: 41,42