研究概要 |
1年目の研究における課題は、1)基盤的情報としてのLn_<2-x>Sr_xNiO_<4-δ>(Ln:La,Nd等)バルクの電子構造、欠陥構造を明らかにすること、2)高温電気化学デバイスにおけるin situ XAFS測定手法を確立すること、3)Ln_<2-x>Sr_xNiO_<4-δ>バルクの電子構造、欠陥構造とin situ XAFS測定の結果を検討、解析することにより、SOFCの空気極における反応機構を明らかにすること、である。 1)X線吸収端近傍構造(XANES)を用いてLn_<2-x>Sr_xNiO_<4-δ>(Ln=La,Nd)の電子構造を調べた。Aサイト原子にSrをドープしていくと、ドープ量に従い欠陥が格子間酸素、定比、酸素空孔となることが分かった。また、電気化学特性の評価から、酸素欠陥が電極性能の向上に寄与していることが分かった。Ln_<2-x>NiO_<4+δ>(Ln=La,Nd)の表面反応係数と科学拡散係数を求めた。いずれの値もLa系の方が大きく、酸化物イオン移動と表面交換反応が速いことが分かった。さらに、局所構造、電極特性との比較から、電極特性の向上には酸化物イオン伝導の向上が寄与しており、Aサイト原子の制御により欠陥構造の制御が可能であり、格子間酸素を介した電極の高活性化が可能であることが分かった。 2)高温で雰囲気・印加電圧を制御しながらX線吸収分光測定を行うことができる高温電気化学in situ XAFS測定装置を作製した。代表的なカソード材料であるLa_<0.6>Sr_<0.4>CoO_<3-δ>(LSC)を用いたSOFC作動環境下でのin situ観察を行った。 Gd添加CeO_2(GDC)上に作製したLSC緻密薄膜電極をモデル電極とし、SOFC作動条件下でのLSC内の酸素ポテンシャル分布を評価すると共に、LSC/GDCにおける酸素還元反応について考察した。 3)LSC系で確立したその場測定手法を用いて、格子間酸素系材料の律速過程の把握を行った。その結果、LSC/GDCの系と同様に電極過電圧による酸素ポテンシャル変化が空気/電極の界面で急激に変化していることがわかり、格子間酸素系電極における電極反応の律速過程が表面反応であることを示している。 以上より、本年度の課題は全て達成され、これらの成果は、高温電気デバイスの高性能カソード設計指針を与えるものである。
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