研究課題/領域番号 |
11J01118
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 康彦 京都大学, 理学研究科, 学振特別研究員(PD)
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キーワード | Jiang-Su環 / 自己同型 / 接合積 / 分類定理 |
研究概要 |
平成23年度は交付申請時に提出した「研究計画」のうち、平成24年度の目的であった「接合積に関するJiang-Su環吸収性の定理拡張」を大きく上回る成果が得られました。具体的にはあるゆるい条件下で、Jiang-Su環の吸収性を特徴づける事に成功しました。成果となる定理の概要は、私が定義した技術的な条件であったはずの「(SI)性」と、作用素環分類理論で中心的な役割を果たす「Jiang-Su環吸収性」が同値であるという研究計画時の予想を大きく超えるものです。この成果はごく最近、数学雑誌「ActaMathematica」に受理され掲載が決定しています。またこの成果は結果的にA.Toms-W.Winterらの予想を部分的に解決するものとなり、自己同型や接合積の研究にとどまらず、作用素環自身の分類理論へ大きく貢献できた成果であると評価できます。Toms-Winterの予想は23年度9月のRIMS研究集会において彼らが現在のC*環分類理論における重要未解決問題として提出したものです。 当初予定していた「研究実施計画」では一年目で自己同型分類理論を完成させ、二年目でその定理の条件範囲である「Jiang-Su環を吸収する作用素環」を抽象的に特徴づけるとしていました。なので、申請時の年次計画とは順序が逆になりましたが、現在一年目の目標である自己同型分類定理の研究をまとめています。 「研究目的」における主定理については、昨年の9月までにある程度満足のいく成果が得られ、その事を各学会で発表しました。時系列としては、その同時期に非常な幸運に恵まれ、二年次の研究目標が達成しましたので、それまで一年次の自己同型分類定理としてまとめていた論文をその成果に合わせ大きく修正する必要が出てきました。現在この修正作業を進行中です。具体的には、論文で仮定していた技術的条件「(SI)性」を取り除ける事が解りましたので、この条件を仮定しない一般化を計画しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書で提出した研究目的における予想を大きく超えた形で定理が証明でき、この成果によりC*環分類理論における重要未解決問題A.Toms,W.Winter予想をゆるい条件下で解決する事ができました。これは平成24年度の研究計画を大きく上回る結果です。更にこの成果により、私が研究を進める上で導入した(SI)性と呼ぶ条件がごく自然で正当な条件であると示す事に成功しました。これらの成果を国際的な研究集会で発表、宣伝する事ができ、数学雑誌「Acta Mathematica」に掲載が決定しています。また、これらの成果とは別に、「研究目的」では当初予定していなかった数学的対象についても結果を得た事などが主な理由です。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究目的であるJiang-Su環を吸収する自己同型分類理論を23年度で得られた結果に沿った形で完成させる事と、A.Toms-W.Winter予想の完全解決に向け、23年度に得られた結果を更に広いクラスの数学的対象に広げる事を主な研究課題とします。具体的に分類理論については23年度前半で既に得られた結果がありますので、これを修正し、同じく23年度に得られた(平成24年度の研究計画であった)「Jiang-Su環の吸収性に関する結果」に自然な形で適応させる事が課題となります。分類理論については経験的に現在までに得られた技術で対処可能であると予想できるので、問題点等は特にありません。Toms-Winter予想の完全解決については、技術的な事となりますが、知られている有限次元近似を得る方法では克服できない障害が見つかっています。この障害を克服するため、先行結果であるU.HaagerupやE.Kirchbergらの技術を我々の研究に適応できる形で抽出し、新たな技術を確立したいと計画しています。
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