研究概要 |
3次元多様体論はThurstonのHaken多様体の双曲化定理により1980年頃に劇的に進展した。定理の証明の中で彼はKlein群論に革新的なアイデアを導入しいくつかの予想を立てた。2000年代はこれらの予想に関して怒濤の進展があり現在では全て解決してしまった。とくにKlein群の分類が確立したと言える。問題が解けていく一方で, 表現の空間の中にKlein群は非常に複雑に入っている事が知られるようになった。具体的には'Bumping'という現象や, 局所連結でない点の存在が分かってきた。 本年度は曲面群の表現の展開写像の絵を描くプログラムを作成した。これにより線型スライス内の離散表現の形や表現の凸包境界の様子が手にとるように調べられるようになった。この研究を通していろいろな事が分かったが, ほとんどはpleating rayの理論でうまく説明される現象であった。より注目を引く現象を見つけるため, 線型スライスの中でpleating rayの'外側'に見える表現について調べた。研究が進み, この外側の表現は複素射影構造の言葉でうまく説明される事が分かった。さらにこの外側の表現達はbumpingしている部分の切り口として説明できる事が分かってきている。このような外側の表現が現れる事は知られていたが, bumpingといった深い現象と関係付けた事に意義があると考えている。 海外出張として5月にモントリオールのCRMで開かれた研究集会に2週間ほど参加。また10月にBrown大学で行われる長期のプログラムにも2週間ほど滞在した。Brown大学では他にSara Maloni氏と共同研究について議論した。その他に論文の校訂や査読の仕事があった。
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