研究概要 |
本研究では、グリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性と機能制御におけるWnt5a/Rorシグナルの役割を解明することを目的とし、主に以下の4つの点に着目して研究を行っている。1)グリオブラストーマ幹細胞におけるRor1,Ror2およびWnt5aの発現解析、2)グリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性制御におけるWnt5a/Rorシグナルの役割の解明、3)Wnt5a/Rorシグナルによるグリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性制御におけるHIFsの関与の検討、4)グリオブラストーマの進展におけるWnt5a/Rorシグナルの関与の検討 初年23年度は、研究計画に従い1),2)について主に解析を行った。 1)グリオブラストーマ幹細胞におけるRor1,Ror2およびWnt5aの発現解析 Neurosphere形成法により3種のグリオブラストーマ細胞における各遺伝子の発現比較を行ったところ、接着培養と比較して幹細胞マーカーであるCD133およびMsi-1のmRNAの発現上昇が認められた。この結果から、Neurosphere形成によりグリオブラストーマ幹細胞を選択的に増殖していることが示唆された。この条件下で、Ror1、Ror2およびWnt5aの発現を解析した結果、Ror2遺伝子の発現誘導が認められた。 次に、幹細胞マーカーである抗CD133抗体によるセルソーターを用いた幹細胞分離を試みた。上記3つの細胞株では陽性細胞が極めて少ないため、Neurosphere形成法を併用し、かつ別種のグリオーマ細胞株を取得し解析を試みたが、ほとんど変化がなかった。そこで、他のがん細胞株を取得して、現在解析を進行している。 2)グリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性制御におけるWnt5a/Rorシグナルの役割の解明 Neurosphere形成法により3種のグリオブラストーマ細胞株の自己複製能を検討した。その結果、先行研究と同様の高いsphere形成能が明らかとなった。この条件下で、RNA干渉法によるRor1、Ror2およびWnt5a遺伝子発現抑制を行ったところ、sphere形成能の有意な減少が認められた。これらの結果から、Wnt5a/Rorシグナルはグリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性制御に関与している可能性が示唆された。
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