本研究では疾患に関与するマクロファージ(MΦ)での転写因子MafBの機能解析を行った。 1.動脈硬化発症におけるMafBの機能解析 これまでの解析からMafBは脂質を含んだMφ(泡沫細胞)で発現し、アポトーシス抑制因子AIMの発現を直接制御することによって動脈硬化発症に重要であることを発見した。今回MafB欠損Mφにアポトーシス誘導を行うと野生型に比べてアポトーシス細胞が増加した。またこの増加はAIMタンパク添加によってレスキューされたことから、MafBが欠損するとAIMが減少することでアポトーシスが促進することが分かった。またAIMは核内受容体型転写因子LXR/RXRの制御を受けるとされていたことから、LXR欠損マウス由来の培養MφにおいてMafbの発現を確認したところ、LXR/RXRのアゴニスト刺激によるMafbの発現上昇が見られなかった。従ってMafBはLXR/RXRによる制御を受ける可能性が示唆された。以上の結果から泡沫細胞におけるより詳細な転写制御機構が明らかとなった。 2.自己免疫疾患におけるMafBの機能解析 Mφによるアポトーシス細胞の除去機能に異常があると、この残骸が自己抗原となり自己免疫反応が誘導されることが報告されている。本研究によりMafBがアポトーシス細胞認識に関わるC1qの構成成分であるC1qa、C1qb、C1qcの発現を制御することが分かった。またin vitroおよびin vivoでMafB欠損MΦはアポトーシス細胞の食食能が低下していた。さらに補体を含む野生型の血清添加により、貧食能の低下がレスキューされた。さらに、骨髄移植によって血液を再構築したMafb欠損マウスでは血清中の自己抗体量の増加が見られた。このことから、MafBはC1qの発現を制御することによってアポトーシス細胞の貧食に重要な役割を果たし、自己免疫疾患に関与することが示唆された。
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