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2011 年度 実績報告書

走運動時の海馬アンドロゲン動態とその生理的意義 : 神経新生に着目して

研究課題

研究課題/領域番号 11J01243
研究機関筑波大学

研究代表者

岡本 正洋  筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)

キーワード低強度運動 / 海馬 / アンドロゲン / DHT / テストステロン / LC-MS/MS / 神経新生 / 精巣摘出
研究概要

走運動による神経新生促進機構におけるアンドロゲンの役割を明らかにするために,走運動が海馬のアンドロゲン濃度に与える影響について検証した。これまで,脳は脂質に富む臓器であり,脂溶性であるアンドロゲンの正確な定量は困難とされてきた。本研究では,アンドロゲンを有機溶媒抽出後,C18カラムで不純物を除去した。さらに,海馬内のアンドロゲンを正確に定量できるLC-MS/MS法を用いて測定を実施した。実験には,Wistar系雄性ラットを用い,精巣摘出(Orchidectomy)群あるいは偽手術(Sham)群にわけ,さらに各群をさらに運動群と安静群に分けた。既に低強度運動(13.5m/min)で神経新生が増加することを確認しており,本研究でも2週間の低強度運動トレーニングを行わせた。トレーニング終了後,ただちに海馬を摘出し,有機溶媒(ヘキサン/酢酸エチル)を用いて,ステロイドホルモンを抽出した。アンドロゲン間のCross-reactivityを避けるためHPLCを用いて分画後,LC-MS/MSに質量分析法を用いて海馬アンドロゲン濃度を定量した。神経新生を促進する2週間の低強度運動トレーニングが海馬アンドロゲン濃度を高めるかを検討した。その結果,低強度運動トレーニングは海馬DHT濃度を増加させ,その効果は精巣摘出群でも維持された。一方,海馬テストステロン濃度及びエストラジオール濃度は運動による変化が見られず,血漿DHT及びT濃度も運動による変化は見られなかった。これらの知見は,低強度運動は血中ではなく,海馬DHT濃度を高めることで,神経新生を促進していることが示唆された。アンドロゲンはBDNFやVEGFなど既知の神経新生促進因子の発現を調節することから,運動誘発性の神経新生促進機構においてアンドロゲンは主要な役割を担っていることが想定される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の予定通り,実験1:走運動が海馬のアンドロゲン濃度に与える影響について検証し,低強度運動により海馬DHT濃度が上昇することを突き止めた。これまで脳内のアンドロゲン濃度の測定は困難とされてきたが,HPLCとLC-HS/MSを併用した方法を習得し,実験を円滑に遂行することが出来た。また,現在得られた知見をもとに投稿論文を作成し,PNASでMinorrevisionとなっている。これは予定したジャーナルよりもハイインパクトな雑誌であることから,当初の計画以上に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

本年度は当初の予定通り,低強度運動で増加する海馬アンドロゲンの生理的意義を明らかにするために,記憶や学習に関わる海馬神経新生へのアンドロゲン作用について検証する。実験は二つ実施する予定で,一つは運動誘発性の神経新生における海馬アンドロゲンの作用を明らかにするために,海馬歯状回へアンドロゲン合成阻害剤および受容体阻害剤が走運動による神経新生の増加に与える影響について検討する。もう一方の実験では,運動誘発性の神経新生におけるアンドロゲン作用機序を解明するために,アンドロゲン受容体阻害剤を投与した時のプロテインキナーゼの変動およびBDNFやVEGFなど発現変化を検証する。これらの知見を得ることができれば,神経新生促進機構におけるアンドロゲン役割および,その機構解明の糸口となることが期待される。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Hippocampal functional hyperemia mediated by NMDA receptor/NO signaling in rats during mild exercise2012

    • 著者名/発表者名
      Nishijima T, Okamoto M, Matsui T, Kita I, Soya H
    • 雑誌名

      J Appl Physiol

      巻: 112 ページ: 197-203

    • DOI

      10.1152/japplphysiol.00763.2011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Reduction in paracrine Wnt3 factors during aging causes impaired adult neurogenesis2011

    • 著者名/発表者名
      Okamoto M, Inoue K, Iwamura H, Terashima K, Soya H: Asashima M, Kuwabara T
    • 雑誌名

      FASEB J

      巻: 10 ページ: 3570-3582

    • DOI

      10.1096/fj.11-184697

    • 査読あり
  • [学会発表] 低強度走運動で誘導される海馬アンドロゲンと神経新生2011

    • 著者名/発表者名
      征矢英昭, 岡本正洋
    • 学会等名
      第153回日本体力医学会関東地方会
    • 発表場所
      九州大学箱崎キャンパス,(福岡県)
    • 年月日
      2011-12-17
  • [学会発表] 神経新生に不可欠な分子基盤:運動で増加する海馬のアンドロゲン2011

    • 著者名/発表者名
      岡本正洋、北條泰嗣、井上恒志郎、イミンチョル、松井崇、川戸佳、征矢英昭
    • 学会等名
      第66回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      生涯学習プラザ(山口県)
    • 年月日
      2011-09-16
  • [学会発表] アストロサイト細胞が産生する外的因子の成体神経新生を調節する機構Astrocytes secreting paracrine factors control hippocampal aging and neurogenesis2011

    • 著者名/発表者名
      寺島和行, 岡本正洋, 井上恒志郎, 岩村弘基, 征矢英昭, 浅島誠, 桑原知子
    • 学会等名
      第34回日本神経科学大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜,神奈川
    • 年月日
      2011-09-16
  • [学会発表] Highly induction of the hippocampal DHT (dihydrotestosterone) in response to treadmill running in male rats2011

    • 著者名/発表者名
      Okamoto M, Hojo Y, Inoue K, Kawato S, Soya H
    • 学会等名
      The 8th International Brain Research Organization (IBRO) World Congress of Neuroscience
    • 発表場所
      Fortezza da Basso Florence, Italy
    • 年月日
      2011-07-17
  • [図書] 公認アスレティックトレーナー専門科目テキストワークブック「スポーツ科学」:運動生理学2011

    • 著者名/発表者名
      征矢英昭, 松井崇, 岡本正洋
    • 総ページ数
      23
    • 出版者
      文光堂
  • [図書] EBMスポーツ医学:高齢者の転倒を予防する運動2011

    • 著者名/発表者名
      征矢英昭, 岡本正洋, マッコリー, ベスト編著
    • 総ページ数
      15
    • 出版者
      西村書店

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公開日: 2013-06-26  

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