本研究目的は、日本に40万人規模で存在するとされている「ひきこもり」という現象の原因理解を行い、逸脱現象を扱う理論的貢献をすることである。「ひきこもり」が社会問題化されて10年あまり経つが、「ひきこもり」の規定要囚を研究する研究は未だに不十分である。 現在のところ、ひきこもりを対象にしたランダム・サンプリングをされた量的研究は筆者らのグループが行った井出・水田・谷口(2011)のみである。ただし、この研究は対象を大学生に限定したものであるため、大学生の「ひきこもり」の性質は判明したものの、大学生以外のひきこもりの性質は明らかにできなかった。本研究では対象を拡大し、全年齢、および、ひきこもり状態にある本人、および家族のデータを得ることによって複合的にひきこもりの要因分析を行う。 本年度は、大阪府下の支援団体でサービスを受けている者を調査した。支援団体で顕在化している「ひきこもり」が対象であったため、一般人口をランダム・サンプリングした調査ではないが、本年度の研究においてもひきこもり現象の輪郭は捉えられるのではないかと考えている。単純集計では、経済状態が生活保護である者が6.7%おり、主観的に「貧しい」と答えた者が13.4%いた。何らかの経済的困難を抱えている者が少なからず存在していることが示唆された。
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