研究課題/領域番号 |
11J01408
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片山 歩美 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 炭素配分 / ヒノキ / 間伐 / TBCF / リン制限 / 樹液流計測 / 炭素循環 / 斜面 |
研究概要 |
森林における炭素配分、つまり、光合成により獲得した炭素をどの様に利用するか、という情報は、森林の炭素収支を理解するうえで必要である。施肥や灌漑が炭素配分に与える影響に関する研究は数多くある一方、間伐に関する炭素配分の研究は皆無である。間伐は炭素収支に影響を与えることが報告されているため、森林施業を考慮した将来予測などのモデル構築の際、炭素配分の情報が必要不可欠であると考えられる。したがって本研究の目的は、スギ・ヒノキ人工林において、間伐が炭素配分に与える影響を評価することである。 本年度の目的は、間伐前の炭素配分のデータを取得することである。そのために、(1)微気象観測、(2)樹液流速度の観測、月ごとの(3)リターフォール量(LF)および(4)土壌呼吸速度(SR)の計測、(5)毎木調査を行った。毎木調査により、本試験地内では斜面上部と下部でヒノキの胸高直径に大きな差があったため、斜面位置の違いが炭素配分に与える影響を把握する必要が生じた。そこで、斜面上部と下部でプロットを設置し(それぞれUP、LP)、両プロットで上記(2)-(5)の計測を行い炭素配分の比較を行った。蒸散量は樹液流速度と辺材面積から、年間SR量は地温によりモデル化して両プロットの年間量を推定した。LFは、1年間を積算し、0.5を乗じて炭素量に換算した。その結果、LPに比較してUPでは、蒸散量とLFは小さく、SRは両プロットで違いはなかった。量的バランス(TBCF=SR-LF)を用いて地下部への炭素配分量(TBCF)を推定したところ、UPの方が大きいことが分かった。両プロットの生葉のリン含有量を調べたところ、UPの方が有意に小さいことが分かった。したがって、UPではリン制限状態が大きく、それが地下部の競争を激化させて炭素配分の違いを生じさせた原因であると考えられる。また、蒸散量が小さいことより、総生産量も小さいことが示唆された。これらがUPで成長が遅くなっているメカニズムであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スギ林での調査もする予定であったが、間伐が予定よりも早く実施されたため、間伐前のデータを取ることが出来なかった。一方、ヒノキ林においては、2012年1-3月に間伐が行われたので、来年度1年間で間伐後のデータを取る予定であり、予定通りに研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ヒノキ林において、間伐前1年間のデータは、おおむね予定通り取れたものの、個葉の光合成特性に関するデータは、技術上の問題より、データを取ることができなかった。この不足データに関しては、個葉の化学分析等のデータを代替とする予定である。また、想定外であるが、斜面位置による炭素配分の違いが明らかとなった。今後、調査を継続することにより、異なる斜面位置において、間伐が炭素配分に与える影響を評価することが可能になる。 間伐が、斜面位置により異なる影響を及ぼすことも考えられ、当初の計画以上の成果を上げることが可能となるかもしれない。さらに、これまでの調査により、本試験地ではリンが制限になっていることが示唆されているので、今後はリンの循環についての調査も行う予定である。
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