研究課題
3次元原子スケールセルモデル(Three-Dimensional Atomic-Scale Cellular Model : ASCeM-3D)を用いて、塩素プラズマによるシリコンエッチングにおける表面ラフネスと、基板表面へのイオン入射角度/エネルギーとの関係を系統的に調べた。エッチング中のsi基板上の微細パターン構造内部では、イオンは表面に対し様々な角度/エネルギーで入射することになるが、こうした現象を実験的に取り扱うのは、非常に難しく、数値計算による現象の予測と発現メカニズムの理解が重要になる。本年度では、特にリップル形状の発現メカニズムに注視し、複雑なリップル形状を空間周波数解析手法により定量化した。これにより、微細な初期ラフネス構造上でイオン散乱が生じ、イオンフラソクスの局所集中や幾何学的な影(シャドーイング効果)が生じることで、大きなラフネスへと進展していくことを突き止めた。また、イオン入射エネルギーが増大するに従って、リップル構造の周期間隔が広くなる傾向を確認した。この現象は、単一ビーム実験で報告されている現象であり、プラズマにおいても、入射エネルギーを選択することでリップル周期構造を制御できることを示唆している。本研究の主たる成果を以下にまとめる。1、新規に3次元形状進展シミュレーションを開発した。2、ナノスケールの形状異常や表面粗さ(ラフネス)ならびに周期構造(リップル)の遷移現象ならびに形成機構を、3次元形状進展シミュレーションとして初めて再現/解明した。3、イオン入射角度に依存して発現する表面リップル構造は、これまで希ガスイオンビームとシリコン基板との相互作用において理論的・実験的に知られているが、プラズマにおいて同様な現象が生じることを本研究で初めて明らかにした。4、表面ラフネス/リップル構造を定量化し、評価をおこなった。5、表面ラフネス構造と、プラズマパラメータとの関係性を示し、ラフネスの制御/抑制に関する技術的指針を提供した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の成果の中で特に、(1)ナノスケールの形状異常や表面粗さ(ラフネス)ならびに周期構造(リップル)の遷移現象ならびに形成機構を、3次元形状進展シミュレーションとして初めて再現/解明した点、(2)表面ラフネス構造と、プラズマパラメータとの関係性を示し、ラフネスの制御/抑制に関する技術的指針を提供した点は、研究の新規性と、学術的重要性の観点から、特に重要な成果だと考える。これらの点が評価され、本年度は、国内/国外にて計2件の学会賞を受賞し、また国内・国際学会/国内研究会にて招待講演を計3件(うち学会賞受賞記念講演1件)を行うに至った。このことは、本研究が、学術的にも工学的にも重要な課題であり、また新規性に優れていることを示している。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 51 ページ: 08HC01-1-08HC01-7
10.1143/JJAP.51.08HC01
http://www.propulsion.kuaero.kyoto-u.ac.jp/Member.Tsuda