研究課題/領域番号 |
11J01432
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
服部 広大 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | リッチ平坦ケーラー多様体 / 局所ケーラー多様体 / 二木不変量 / 平均曲率流 |
研究概要 |
本年度は、非コンパクトリッチ平坦ケーラー多様体と、それに関連する多様体について主に研究した。特に、ケーラー多様体の一般化である局所共形ケーラー多様体上の二木不変量と、錐型の特異点をもつリーマン多様体における平均曲率流について調べた。局所共形ケーラー多様体とは、エルミート多様体であって局所的にエルミート計量がケーラー計量と共形同値になるようなものである。 ケーラー多様体上には、ケーラーアインシュタイン計量の存在の障害として知られる二木不変量が定義できるが、今年度は、二木昭人氏とLiviu Ornea氏との共同研究により、局所共形ケーラー多様体上にも二木不変量を定義できることがわかった。この不変量は、局所共形ケーラー多様体の普遍被覆空間がリッチ平坦ケーラー計量(もしくはケーラーアインシュタイン計量)を持つための障害となり、非自明な値をとる局所共形ケーラー多様体が存在することもわかった。 非コンパクトリッチ平坦ケーラー多様体の重要な例の一つに、佐々木アインシュタイン多様体の錐がある。一般に佐々木多様体の錐はケーラー多様体であり、佐々木多様体がアインシュタインであるとき錐はリッチ平坦となる。従って、佐々木アインシュタイン多様体の錐において特殊ラグランジュ部分多様体と、ラグランジアン平均曲率流を考えることができる。私は、二木昭人氏、山本光氏との共同研究により、佐々木多様体のコンパクト部分多様体を初期値とする平均曲率流が有限時間内で必ずブローアップすることを示し、特にブローアップが錐の頂点で起こる場合のブローアップの挙動を調べた。その結果、プローアップ直前の平均曲率と第2基本形式の爆発のオーダーに関するある条件を課すことで、ブローアップ時の挙動が平均曲率流の自己相似解で近似されることがわかった。また、その「ある条件」をみたすような典型的な具体例を構成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の主たる目的は、非コンパクトなリッチ平坦ケーラー多様体の中でも特に近年注目度の高い佐々木アインシュタイン多様体の錐と、そのある種の一般化と捉えられる局所共形ケーラー多様体の理解が進んだため、研究の達成度はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も非コンパクトなリッチ平坦ケーラー多様体の構造の解明に取り組みたい。次は、リッチ平坦ケーラー多様体の中でも四元数的な局所構造をもつ超ケーラー多様体を調べたい。その代表的な例としてはトーリック超ケーラー多様体と箙多様体が知らている。トーリック超ケーラー多様体には、微分構造を変えずにリッチ平坦ケーラー計量の漸近挙動を変えるTaub-NUT変形というタイプの変形が知られているが、このような変形を箙多様体の場合でも考えるのが目標である。
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